タミネルの秘密
ガゼとバンスィがそうやって話をしてるのを何気なく聞いていたユウカの隣で、タミネルはいつもと変わらずに仕事をしていた。しているように見えた。だが、よく見ると顔が赤い。本人は平然としているように装っていたが、実は熱があったのだった。とは言え、<風邪>などの病気とはぜんぜん違う。これはタミネルの種族の特徴で、体が妊娠可能期間に入ると体温が上がり、感情が高ぶるのである。平たく言えば<発情期>ということだ。
普段は冷淡なタミネルだが、この時期ばかりは印象が変わる。頬を染めて目を潤ませた感じになり、明らかに艶っぽくなるのである。それは、同性であるユウカから見てもドキッとするほどだった。しかし、タミネル自身は自らのそういう体質を好ましく思っていなかった。彼女が本来の惑星にいた時からそうだった。異性を誘っているかのような(いや、実際に肉体の方は間違いなく受け入れ準備が出来ていると誘っているのだが)自らの変化を疎み、忌避していたのだった。
だがそれは、彼女がいた社会ではまだ十分に認知された感覚ではなく、同性愛などと同じように異端として奇異の目で見られるようなものであったのだった。故に、言い寄ってくる男性を冷たくあしらったことで逆恨みされ、階段から突き落とされた為に命を落とし、ここに来たのであった。
そのことを知っているのは彼女のエルダーでもあったアーシェスを始めとしたごく一部の者でしかない。彼女がそれに触れることを拒んでいるから、尊重してくれているのだ。
「タミネルさん、大丈夫ですか…?」
不意に、ユウカがそう問い掛けてきた。さすがに気になってしまったようだ。風邪などの病気と間違われて気遣われるのはいつものことなので別に不快になったりはしないのだが、つい、
「問題ありません。仕事に集中してください」
といつも以上に冷たくあしらうように言い方になってしまったのだった。それに気付いて視線を向けると、そこには怯えたような目をして「ごめんなさい…」と謝るユウカの姿があった。いつもならここでリルが間に入ってくれるのだが、間の悪いことに休暇を取ってバカンスに出掛けている最中なのである。
『ああ、私はまた…』
タミネルは後悔した。気遣ってくれる相手にまで刺々しい態度をとってしまって傷付けてしまう自分を情けないと思った。だから、
「…私の方こそごめんなさい…。せっかく気遣ってくださったのに…。私も、人付き合いが苦手なので……」
と思わず口走ってしまったのであった。




