夜道にご注意。痛い目に遭いますから。余計なことをすると
メジェレナとガゼのいがみ合いはあっても、三人でこうして一緒にアニメを見てられるのは楽しかった。が、夜も更けてそろそろお開きにという頃になると今度はまた、どっちが先に帰るかということでメジェレナとガゼは妙な緊張感を漂わせたのだった。
で、
「もう、いい加減にして!」
とユウカが声を上げて二人を同時に追い出すというのもいつものパターンだった。そうやって他人に強い言葉を発するというのも、地球にいた頃の彼女では想像もつかないことであった。でも、それが不思議と楽しかった。
ちなみに、このアパートはボロい安普請に見えるがそれは見た目だけで、作りもしっかりしているし防音もほぼ完璧だった。部屋で爆発でも起こさない限りは他の部屋には伝わらない。大声を上げたくらいでは聞こえないのだ。だから安心して人を呼んでアニメ三昧ということもできた。
また、外見上は幼いガゼが夜更けに一人で家に帰っても心配する必要もない。元よりそんな不埒な人間はまずいないし、いたとしてもガゼなら問題ない。なにしろ彼女は徒手格闘術のエキスパートなのだから。以前も言ったがここでは武器はその威力をほとんど発揮しない。ダメージを与えるためには素手での攻撃が必要になる。その素手での攻撃力が彼女は並外れているのだ。
だが、一人で家に帰ろうとしていたガゼの前に、男が立ちはだかった。見ればかなり酒に酔っている風だった。
「お嬢ちゃん、オジサンと遊ばな~い?」
酔っぱらいの戯言に、ガゼは右手の指をこめかみの辺りに当ててあからさまにイラついた表情を見せた。せっかくユウカの部屋でアニメを堪能していい気分で家に帰ろうとしているというのにこれでは台無しだと怒っているのだ。しかし酔っぱらいはそんな彼女にお構いなしで手を伸ばしてきた。大きな事件は少ないが、この手の無礼者はまあそれほど珍しくもなかった。
では、どうするか?。
とりあえずぶちのめす。それが答えだった。どうせ痛いだけで大した怪我もしないのだから、自分の体を痛めない程度に加減すれば、当然、相手のダメージも致命的にはならない。万一怪我をしても必ず元の状態まで治る。だからガゼは掴みかかってきた男の手を取り引き寄せてバランスを崩させた上で懐に入り込み、股間と腹と鼻っ柱にそれぞれ蹴りと肘と掌底をくらわせた。見事なコンビネーションだった。
悶絶する酔っぱらいを「ふん!」と鼻であしらい、どっかどっかと大股で夜道を歩いて帰るガゼなのだった。




