ユウカも無事にここの生活に馴染んでいけたようです
電子レンジと炊飯器とオーブントースターがキッチンに並び、小さいとはいえ本棚が置かれ、テーブルの上にはノートPCがあり、これでもう完全に一人暮らしの部屋が完成した。
『これが、私の部屋なんだ…』
自分の部屋を眺め、ユウカは感慨に浸っていた。そんな彼女を見詰め、アーシェスが微笑む。
「あとはもう、何か要るものがあったらその時に買うようにすればいいね」
そう、これからも当分、来たばかりだと分かればもてなしは受けられるだろうが、基本的には自分で暮らしていくことになる。自分で働いて自分の生活を作っていくのだ。でも今日明日は仕事は休みだから、とりあえずは休日を楽しめばいいだろう。
するとユウカはさっそくテレビを点けて、アニメを見始めた。それを見てアーシェスは自分がいるとかえって邪魔かもしれないと感じて、
「じゃあ、もし何かあったら電話して」
と言って帰っていった。リサイクルショップでもらったスマホに、さっそくアーシェスの電話番号が登録されていた。
ここでは電話は携帯電話が基本で、しかも通話は原則無料である。犯罪がそもそもほとんどないので携帯電話が悪用されることもないために身元確認も要らず、中古品でも手に入れればすぐに使えるものだった。が、ユウカはもともと携帯電話を持っていなかったこともあって、あまり使うこともないと思っていた。それよりはタブレットのようにネットに使うことの方が多いだろう。ちなみにデータ通信も無料で使い放題である。こんな小さな端末でやり取りできる程度のデータ量など、たかが知れているからだ。
しかし今はノートPCがあるのでそちらでネットをすることになった。テレビでアニメを見つつ、ノートPCでネット配信されているアニメもチェックする。そこには地球でやってるアニメもあった。厳密に言えば地球側と契約など結んでるはずもないので海賊放送になるのだが、元より地球からすれば存在そのものが確認されてない<書庫>に対して地球の法律は及ばないし、さらにそういう知識のないユウカがそんなことを知るわけもなく、単純に続きが見られると喜んだだけだった。
そんな感じでさっそくアニメ三昧の生活が始まった。一人暮らしの開放感を味わえる余裕も出てきて、彼女の表情はここに来た時とはもうすっかり別人と言ってもいいくらいだった。確かにここは暮らしやすい世界だろう。今の自分の状況を受け入れることが出来る人間にとっては。その点で言えば彼女はそれができる人間だったと言える。
そして月日は、いや、<月>という概念がここにはないのでその表現が適切かどうかは分からないが、とにかく地球時間にして一年以上の時間が瞬く間に過ぎたのだった。




