成長するということは、自分で自分を育てるということでしょうか
アーシェスが結婚してるという衝撃の事実で少し頭が混乱してしまったけれども、ユウカは自分の仕事はこなした。
今日はタミネルが休みで、代わりに店長のハルマが責任者ということだった。と言っても、仕事はそんなに忙しくなく、作業自体はユウカとリルだけでも十分こなせるものだった。となると当然、刺激的な本の検品は全てリルが行うことになる。
と、リルが突然声を上げた。
「あちゃ~、これ間違ってるよ」
その声に思わず視線を向けたユウカが見たものは、やっぱりほぼ全裸の女性の写真が表紙の雑誌らしき本を持ったリルの姿だった。
「店長~、これなんですけど」
バックヤードから店舗の方にリルが声を掛けると、ハルマが現れて品物を確認した。それから発注書を確認し、
「ああ、これは発注ミスだね。発注書が間違ってる。発注をかけ直すよ」
ということでその話は終わったのだった。ミスはミスとして対処するが、そこで誰の責任かということは強く追及しない。それがこの店の方針だった。その様子を見てユウカはホッとしていた。これであまり厳しく追及されるようだと怖くて仕事が続けられないかもしれないと思ってしまったが、どうやらその心配はなさそうだと思った。
もちろん今回のミスはユウカのミスではない。しかし、自分に自信のないユウカは、自分がミスをすることを恐れていた。ミスはしないように気は付けるけれど、完璧にこなす自信もない。いずれはきっとミスをするだろうと思っていた。だから自分がミスした時にどんな風に怒られるのかということを想像してしまって、緊張してしまったのだ。だが、ここではそういうミスで罵られることもないと感じ、その緊張が和らぐのを感じた。無駄に緊張し過ぎるとかえってミスをしやすくなるのも人間という生き物だ。適度の緊張は必要だが、それが行き過ぎて視野狭窄を起こしてはむしろミスの素である。店長のハルマはそう考えていたのだった。
そういう点でも、最初にこの店をユウカに紹介したアーシェスはさすがと言うべきかも知れない。彼女に合いそうな仕事を見繕ってくれたのだから。
とは言え、そんなアーシェスでもヘルミについては手を焼いてしまう。それほど人間の心理というのは一筋縄ではいかないということだろう。
ユウカは今、自然とそういうことも学ぶことが出来る環境にいた。彼女の両親はただ彼女を支配し操ることしか考えてなかったが、それでは人間は上手くは動かせない。ユウカがひどく自己評価の低い人間に育ってしまったことがそれを物語っていると言えるのだろう。これから彼女は、そういう自分を改めて自ら育てていくことになるのだった。




