普通の本屋さんですから、まあそういうのも扱ってます
三日目の夜も、ユウカはアーシェスと一緒に過ごした。でもそれは、アーシェスにとっても、ヘルミの近くいるという意味で利のあることだった。完全に傍にいることはできなくても、少しでも近くにいてあげたかったのだ。
だが同時に、本人が望まない形での過度な干渉はしない。それがエルダーの心得であり、第一義である。あくまでここでの生活に適応できるように促すだけで、強制も強要もしない。まあ、しても意味がないというのもあるのだが。
自分の隣で穏やかな寝息を立てるユウカを見詰め、アーシェスは柔らかく微笑んだ。この子が自分の最後の担当になるということがすごく幸運に思えた。もっとも、彼女よりもヘルミの方が時間がかかりそうではある。だから実質的にはヘルミが最後になると言えるだろう。どれだけ時間がかかるかはまだ分からないが、二百万年を生きた彼女にしてみればいずれにせよ僅かな時間でしかない。彼女以上に手を焼かされた例もある。殴り合いのケンカになったこともある。それらも今となればいい思い出だ。
明日はユウカを銭湯に連れて行ってあげたいとアーシェスは考えた。仕事を頑張ってバストイレ付きの部屋に移るのも一つの手だが、銭湯で裸の付き合いというのもいいものだということを教えてあげたかった。せっかくここで暮らすのなら、そういう楽しみも知っておいた方が断然楽しめるからだ。
そんなことを思いつつ、アーシェスも眠りについたのだった。
翌朝、今日は四日目。仕事としては三日目となる。今朝はアーシェスも一緒に朝の用意を済まして、リーノ書房へと向かった。店の前でアーシェスと別れ、ユウカは「おはようございます」と挨拶をしながら自分の持ち場へと向かった。既にタミネルが仕事を始めており、「おはようございます」と声を掛けながらもユウカもすぐに仕事に取り掛かる準備をした。そこへまた「おはよ~」とリルが出勤してくる。そして9時になり、ユウカは自分の仕事をこなした。
少し慣れてきたからか、商品である本について、題名以外のことも目に付くようになってきた。多くがいわゆる新書と呼ばれる物のようで、文学作品らしい本が多かった。もっともそれは、タミネルの配慮だったのだが。
なにしろリーノ書房は文芸作品専門の書店というわけでもない一般的な店なので、当然、猥雑な本も扱うし、とてもユウカには見せられないようなどぎつい内容のものもある。そういうものは自分とリルでチェックしていたのだった。その為、冷静に淡々と作業をこなすタミネルの前に、口に出すのも憚られるタイトルの本がずらりと並んでいた。表紙などももちろんその感じである。それらを黙々と検品していくタミネルの姿は、いささかシュールなものがあったのだった。




