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ケンカは基本、ステゴロで

顔を背け黙ったまま歩き出すヘルミの後を追うようにアーシェスが歩き出し、それにユウカとクォ=ヨ=ムイが続いた。と言っても気怠そうにゆっくり歩くクォ=ヨ=ムイはみるみる遅れてすぐに見えなくなってしまったが。


ツカツカと大股で歩くヘルミの後ろを歩くアーシェスだったが、体の小さな彼女にとってはほぼ小走りのような感じだった。ユウカも引き離されないように早足で歩くので精一杯だった。クォ=ヨ=ムイは…、そもそもついて行く気もなかったのだろう。


アパートに着いて自分の部屋のドアを開けすぐに閉めようとしたそれを、アーシェスは体で押さえた。


「チッ!」


舌打ちしたヘルミだったが、ドアを閉めることは諦めたように部屋に上がってベッドに倒れ込み、毛布を頭からかぶってしまった。


そのまま部屋に上がり込んだアーシェスに釣られるようにしてユウカも思わず部屋に入ってしまったが、彼女がそうしなければいけない理由は何もなかった。これはあくまでエルダーであるアーシェスの役目であって、ユウカには何の関係もなかったのだ。


勢いで上がり込んだものの『ど、どうしよう…?』とユウカは途方に暮れた。思わず部屋を見回すと、あらゆるところに髑髏や悪魔か何かをモチーフにしたらしいポスターなのか何なのかよく分からないものが部屋中に貼られ、尖った鋲まみれの革ジャンらしきものもいくつも壁から吊るされ、おどろおどろしい気配を放っていた。完全に女性の一人暮らしの部屋などではなく、ユウカは心底震え上がった。


だがこの時、アーシェスにもユウカを気遣う余裕はなかったのだった。と言うか、ユウカが一緒に入ってきていることにすら気付いていなかった。ベッドで毛布にくるまるヘルミに向かって、彼女は静かに声を掛けた。


「ヘルミ…、あなたが信頼していた人に裏切られたことはきっと辛かったと思うし、そのことで気持ちが荒んでしまうことも仕方ないと思う。だけど、あなたがいくらそれを呪っても過去には戻れないの。無かったことにはならないの。いくら時間がかかってもいいけど、いつかはそれを認めるしかないんだよ…」


彼女の言葉に、ヘルミは応えなかった。身動き一つしなかった。アーシェスはさらに続ける。


「何度も言うように、あなたがいくら落ち込んでても恨んでてもいい。そうする自由があなたにはあるしここはそれが許される世界なの。だけど、あなたの苦しみに他人を巻き込むのはやめて。あなたがケンカした相手だって痛いんだよ?」


アーシェスの言う通りだった。ここでは命の危険もあるような武器による攻撃はダメージが再現されない。つまりケンカなどは基本的に素手で行うことになり、さっきのヘルミの姿になるほど痛めつけるには、相手にもかなりのダメージがあるはずなのだった。


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