三日目。本格的にここでの生活が始まります
ユウカ、アーシェス、メジェレナの三人でのおしゃべりの時間は楽しくて、あっという間に夜が更けてしまっていた。
「あ、そろそろお暇しなきゃ」
自分の時計を確認したメジェレナがそう言って部屋に戻ると、アーシェスはユウカにシャワーを浴びるように促した。今日もシャワーだけになってしまうが、仕方なかった。交代でシャワーを浴びて、買ってきたドライヤーで髪を乾かして、また二人でベッドで眠った。
翌朝、アラームで目が覚めたユウカは、アーシェスがいないことに気が付いた。トイレかなと思って見回すと、テーブルの上にサンドイッチとメモが置かれているのが分かった。見たこともない文字で書かれていたそれも、見ただけで意味が分かった。
『私が担当してる他の子のことで急用ができたので、先に出ます。朝食はサンドイッチでいいかな。お仕事がんばってね』
と書かれていた。少し寂しい気持ちにもなったけど、アーシェスも自分一人だけを相手にしてていいわけじゃないことが理解できて、それは仕方ないと素直に思えた。
だからサンドイッチを食べて、歯磨きをして、服を着替えて、鏡を見ながらブラシとドライヤーで髪を整えて、昨日よりはまたもう一つ身だしなみに気を付けて、八時半には部屋を出た。書店までは歩いて十分ほどだったが、念の為ということだ。学校にも、予鈴の十分前までには行くようにしていた。
道はそれほど難しくなかったはずなのに、分かれ道で少し自信がなくて戸惑っていると、アーシェスよりもさらに体の小さい、でも見た目にはそれなりに年齢のいってそうな女性に「どうしたの?」と声を掛けられた。
「本屋さんって、どっちですか?。リーノ書房っていう本屋さんです」
これまでは知らない人に声を掛けられると声を出すまでにも一苦労だったのに、自分でも驚くぐらいすんなりとそう尋ねられた。するとその小さな女性は、右の方を指さして、
「ハルマのお店ね。それならこっちを真っ直ぐ行くとすぐよ」
と、ユウカもそうじゃなかったかなと思っていた方を示してくれた。
「ありがとうございます」
素直にはっきりと丁寧に頭を下げてお礼を言えたユウカに、その女性は言った。
「私は大丈夫だけど、頭を下げる時は気を付けてね。背の高い種族の人たちの中には、頭を下げるのは服従のしるしと受け取る人たちもいるから。ここはたくさんの種族が暮らす<書庫>。いろんな人がいるからそういうのも覚えておくといいよ」
「は、はい、ありがとうございます」
と言ってまた頭を下げそうになって、ユウカはちょっとあたふたしてしまったのだった。




