ネルアーキ・ヒローディオ・アフラクランとニレアラフタス・アフラクラン夫妻、食堂経営
それは、いかにもドラマとかで出てきそうなちょっと懐かしい感じのする食堂だった。味はそこそこだが手頃な値段でそれこそ何でもありな、メニューなんてあってないようなものって感じの店だった。
「こんばんは~」
扉を開けながら気安い感じでアーシェスが声を掛けた。すると、割烹着っぽい服を着た、金髪を頭の両側でまとめた髪をさらに胸の前で結んだ少々肉感的な若い女性が振り返りながら、
「あ、いらっしゃい、アーシェス。今日はメジェレナも一緒?」
と明るいにこやかな感じで応じた。その直後、二人の後ろに立っているユウカに気付いて、
「あれ?、ひょっとして新しい子?」
とも訊いてきた。
「うん、イシワキユウカちゃん。よろしくね」
アーシェスに紹介されて、ユウカがやや上目遣いな感じでお辞儀をした。
「そっか、じゃあ、サービスしなきゃね」
そう言いながら店員らしき女性は三人を席に案内してくれた。彼女がお冷を用意してる間に席に着き、アーシェスが言った。
「彼女はここの女将さんで、ニレアラフタス・アフラクラン。で、奥の厨房にいるのが旦那さんで店主のネルアーキ・ヒローディオ・アフラクラン。二人ももうここで三百年ほどお店をやってるんだよ」
言われて厨房の方を見ると、マニと似た感じのがっしりとした筋肉質な体が厨房用の白衣の上からでも分かる、いかにも『ガチムチ』な感じの男性が、こちらに愛想をふりまくでもなく作業に集中しているのが見えた。
「ごめんね~、うちのヤツ、愛想悪くて」
お冷を出しながらニレアラフタスが苦笑いを浮かべ、ネルアーキに向かって、
「ほら、新しいお客様なんだからちゃんとご挨拶して、いつも言ってるでしょ!」
と、子供に言い聞かせるように声を掛けた。それを受けてネルアーキも顔を上げたものの、
「よろしく…」
という感じでやはり愛想もへったくれもない呟きと共に小さく頭を下げただけだった。その様子にニレアラフタスが、
「あんた、ホントにいつになったらその脳筋ぶりが治るの!?。うちは客商売なんだって自覚してよ、もう!」
などとへそを曲げるというのがこの店の定番のやり取りだった。だから他の客も慣れたもので、
「ラフタスちゃん、アーキにそんなの要求したってムダムダ。こいつはこういう奴なんだから」
「そうそう、ラフタスだってそんなアーキにメロメロなんだもんな。だから子供だって十三人もできたんだろ」
とヤジを飛ばし、それに対して、ニレアラフタスが、
「ちょっとそこウルサイよ、この酔っぱらい共が!!」
と返すのもまた、日常なのであった。




