二日目。でもブラシも鏡もない
翌朝、目が覚めると、昨日のことは夢じゃなかったんだなと改めて実感した。アーシェスはすでに起きてて、ユウカが起きるのを待ってくれていた。
「おはよう」
そう声を掛けられて、ユウカも「おはようございます」と返事をした。起き上がって髪を整えようとしたら鏡がないのに気付いて、あっと思った。
「鏡がないよね。今日にでも手に入れなくちゃね」
アーシェスが察したように言った。そして、
「今のところはこれで何とかね」
と、スマホのような携帯端末を出して、ユウカの前に差し出してくれた。カメラが起動してて、画面に自分の姿が映し出されていた。
「ありがとうございます」
と恐縮しながら画面を見つつ手櫛で髪を整えようとしたが、鏡とは違って左右反対になってなかったから逆に戸惑ってしまった。その様子を見てたアーシェスが、
「ごめん、鏡面モードの方がやりやすいかな」と言いながら携帯端末を操作して、画像が反転した鏡の映り方にしてくれた。すると今度はスムーズにできた。
とは言え、ブラシもなければドライヤーもないから、綺麗には整えられなかった。普段から特に何かセットとかしてるわけでもないストレートのセミロングだから辛うじてなんとかなったという感じだが、しかし今はこれでも仕方ない。とりあえず口をゆすいで顔を洗って、キリオからもらったテーブルを挟んでアーシェスの向かいに座った。するとアーシェスが、テーブルの上に置いた買い物袋からサンドイッチとオレンジジュースらしきものを取り出して言った。
「とにかく、朝ご飯にしよ。それから今日は買い物に行って、その後は仕事探しだよ」
『仕事探し』。そう言われて、ユウカは緊張するのを感じた。まだアルバイトもしたことがないのに仕事とか、できるのかなと思った。そんな不安も彼女にとっては慣れたものなのか、アーシェスが穏やかに微笑みながら語り掛けてくれた。
「大丈夫よ。ここには本当にいろんな仕事があるの。それに、ここでの仕事は、税金を払ったりする義務を果たすための仕事じゃないの。純粋に、自分が誰かの役に立つ存在だっていうのを実感するためにやるだけだから、そんなにシビアなことを要求されたりはしないわ。まあ、その辺は仕事にもよるけどね。クオリティを要求される仕事だったりすると、さすがにその部分ではシビアかな」
と、微妙に安心できるようなできないような説明に、ユウカは戸惑うしかできなかった。
しかしまずはサンドイッチを食べて、オレンジジュースらしきものを飲んで、どうやらサンドイッチと一緒にアーシェスが買ってきてくれた歯ブラシと歯磨き粉で歯を磨いて、一応、用意は済ましたのだった。




