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何度だって泣いていいんだよ

「で、私も結局、奴隷として使い潰されて死んで、たまたま選ばれてここへ来たっていうわけ。でも、それからずっと部屋に閉じこもって、楽になれるのを、また死ぬのを待ってたの。だけどここでは死ねないからね。そんなこんなで気が付いたら一万年経ってた。私自身の感覚だとせいぜい一年とかそこらだと思ってたけど、自我が凍った状態が長すぎて時間の感覚が滅茶苦茶になってたみたい」


ユウカは、声もなかった。何て言っていいか分からずに、ただアーシェスの話に耳を傾けるしかできなかった。


「だから最初のアパートの住人なんて、私の顔も見たことない人が何人もいたと思う。そんなのでもこうやってエルダーとかになれるんだから、ユウカも気楽にやったらいいよ。けど、何か悩みたいことがあるとか考えたいことがあるとかだったら、とことん悩んで考えたらいいと思う。ここではそれが許されるからね」


そう言ってアーシェスはまたにこやかに笑った。その笑顔は、自分の苦しかった過去を受け入れた人間のそれであった。


彼女の過去を聞いて、ユウカは、自分が恥ずかしくなった。彼女に比べれば全然どうってことのない経験で不幸だと思ってた自分が恥ずかしかった。けれど、アーシェスはそんなユウカの複雑な胸中を見抜いたかのように言った。


「ユウカ。あなたがどんな経験をしてきたのか私には分からない。だけど、あなたがそれを辛いと感じてきたのなら、それはあなたにとっては本当に辛いことだったの。私や他の人の過去と比べてどうだったっていうのはそんなに重要なことじゃないわ。大事なのはあなたにとってどうだったかっていうことだから。だからこれからも、辛かったら泣いてもいいんだよ。私、あなたの苦しさを受けとめてあげたい」


穏やかな視線で真っ直ぐに見詰めながらそんなことを言われたら、もうダメだった。何度も泣いたのにまた込み上げてきてしまって我慢ができなかった。両親ならここで『いちいち泣くな!』と怒鳴っただろう。その度にユウカは自分の心を殺してきた。塞いで押し込めて閉じ込めて感情を表に出さないように努めてきた。でもここではそれは必要ないとアーシェスが言ってくれてるのだと感じた。


だからまた、アーシェスに縋りついてしまった。こんなに小さな体なのに。自分よりずっと小さいのに、すごく大きくて広くて包み込まれるものを感じた。


「辛かったね…」


そう言葉を掛けながらそっと体を抱き締めて背中をさすってくれる彼女に、ユウカはずっと縋り付いていたのだった。


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