なし崩し的に歓迎パーティー
クォ=ヨ=ムイの力のおかげで一気に人が住んでる部屋らしくなった石脇佑香の部屋に今度は、
「は~い、ユウカちゃんの入居を歓迎してミルフィーユ鍋にしてみました~」
と言いながらマニが鍋を抱えて部屋に入ってきた。六畳一間の部屋に、ユウカ、アーシェス、メジェレナ、クォ=ヨ=ムイ、キリオ、ヌラッカ、シェルミの七人がいたところにさらに体の大きなマニが入ってきたものだから、一気に窮屈な印象になった。仕方なくユウカとアーシェス、シェルミの三人がベッドに腰掛けて、そのままユウカの歓迎パーティーへとなだれ込んだのだった。
クォ=ヨ=ムイがカセットコンロを出し、鍋を温める。ユウカの部屋には食器もまだなかったので、他の住人はいったん自分の部屋に戻って食器を取ってきた。
「これ、使ってなかった新品だから良かったら使って」
と、メジェレナが茶碗と割り箸をくれた。その上、「ポン酢でいいよね」とポン酢までくれた。他の住人もそれぞれ自分の好きな調味料を自前で持ち寄って、鍋をつつくことになった。
少し落ち着いてくると空腹を感じ始めてたユウカにとってもちょうどよい夕食になった。
『あったかい…』
ユウカは、こうして皆で鍋をつついている状況に気が付き、ふとそんなことを感じた。それは、彼女が今まで感じたことのない感覚だった。家でも、学校でも…。部活をしてる時が最もそれに近かった気がするが、それでもここまでではなかった。それを思い出してしまって、彼女は白菜と豚肉を入れた茶碗を手にしたまま、ポロポロと涙をこぼした。
アーシェスがそんな彼女をそっと抱き締めてくれて、シェルミは背中を撫でてくれた。それ以外の住人も、穏やかな表情で彼女が落ち着くのを待ってくれた。こんなに温かくて優しくて穏やかな空間があるなんて、彼女は知らなかった。漫画やアニメの中にしかないものだと思ってた。それが今、こうして自分を包んでくれてるのだ。
唐突に命を終えたと言われた時には本当にどうしたらいいのか分からなかったけれども、今、こうしている分には自分が本当に死んだなんて思えなかった。死んだのではなく、ただ命の有り様が変わっただけだとしか思えなかった。それどころか、単に、一人で別の町に引っ越してきただけとしか思えなかった。そこでこうして、温かい歓迎を受けてるだけにしか思えなかった。
ある意味では、彼女の認識も間違いではないだろう。そもそも命というものの定義も実は曖昧なのだ。だからこうして自我を維持できている以上は、彼女は死んではいないのだとも言えるかもしれないのだから。




