レンジェラニア・アルフォレニシス、元OL、お酒が友達
三号室のレン、レンジェラニア・アルフォレニシスは、七日前に<書庫>に来たばかりだった。それまでは自分の故郷の惑星で普通のOLをしていた。
その惑星は、地球によく似た惑星で、そこに住む人間も、特徴的な耳や長寿命などの細かい差異を除けば地球人とほぼ変わりない種族だった。文明や文化や社会構造やメンタリティも非常に似通っていた。
ただ地球と大きく違うところがあるとすれば、そこは惑星全体が日本に似た一つの国であり、数百年に渡って戦争がなかった平和な国だということだろう。日本で言う戦国時代を経て惑星全体が一つの国としてまとまり、以来、戦争すべき外国がなくなり、戦争がなくなったのだった。
知っての通り日本では徳川家康を初代とした将軍家が権力の座に就いたのだが、レンの惑星では日本における天皇にあたる真帝が統一した為、社会構造としては第二次大戦前の日本に近いとも言えただろう。ただ、日本と違って列強諸国との対立がなかったことで尊王攘夷も開国も軍国化も世界大戦も起こらず、そのまま戦前戦後の日本のいいとこどりをしたような社会になっていた。
それでも、会社勤めをすればそれなりのストレスもあり、それを解消する為に酒で憂さを晴らすというような光景は当たり前のようにあったのである。
そんな中で生まれ育ったレンも、普通の会社の普通のOLだった。週末には同僚と一緒に夜の街に繰り出して居酒屋のような店をはしごしてはムカつく上司の悪口を言って深酒をして休日を二日酔いで過ごすような本当にただのOLだった。
だが、二日酔いで朦朧とした頭で近所の店に買い物に出ようとして信号を見落とし、自動車に撥ねられて命を落としここに来たということであった。
さすがに自分が死んでここに来たということを知った時には落ち込んで不安な様子を見せてもいたが、元より嫌なことがあっても酒を飲んでくだ巻いて発散すればケロッとしているような性分だった為、こうして連日、歓迎パーティーをしてもらったことですっかり馴染んでいたのだ。
「いやホント、ここって天国だよね。酒は美味いし仕事は楽だし、私、死んでよかったわ~!」
などと、どこからどう見ても単なる酔っ払いになってゲタゲタと品のない笑い声を上げていた。
でも、ユウカは知っていた。歓迎会の後、深夜にアパートの前で一人でカップ酒を手に空を見上げながら涙を流していたレンの姿を。友人や両親に迷惑を掛けたまま詫びの一つも言えずにいることが悲しいと思っていることを。
それを紛らす為にはしゃいでいるのだということを、ユウカは知っていたのだった。




