突然の来訪者(でも来るのは分かってましたが)
三人は部屋に戻ると、改めてテレビの前に陣取った。これから、レルゼーがリーダーを勤めるロックバンド、<レルゼリーディヒア>のライブ配信が始まるところだったからだ。
ユウカもガゼもロックにはそれほど興味はなかったが、やはり身近なものがテレビに出てるとなれば気になってしまう。ましてやメジェレナはレルゼリーディヒアの大ファンだった。
「はあ…」
今度はメジェレナがうっとりとした表情を見せる番だった。体でリズムを取りながら、気持ちが昂っているのが分かる。幸せそうなその顔に、ユウカもどこか嬉しさを感じていた。
一時間の小規模なライブだったが、メジェレナは浮かれてるのが分かるし、ユウカもガゼも丁度いい感じで楽しめた。このノリをずっとというのはついていけなくても、このくらいならという感じだった。
「良かった~!。今回はちょっと遠くて行けなかったけど、また行きたいな」
頬を紅潮させたメジェレナが興奮が抑えきれない風にそう言った。
とその時、コンコンと部屋のドアがノックされた。
「はい、どうぞ」
そのノックの仕方で誰が来たのか分かったユウカが声を掛けると、ドアが開いて黒づくめの長身の人影が現れた。レルゼーだった。
「レルゼーさん!、ライブ素晴らしかったです!!」
メジェレナが興奮そのままに立ち上がって言った。それに対して「ありがとう…」とレルぜーがいつもの調子で淡々と答える。
それにしても今さっきまでライブをしていた筈のレルゼーが何故ここに?。
種明かしと言うか、実際には種もなにもない。邪神、カハ=レルゼルブゥアであるレルゼーにとっては距離など何の意味もないのだ。いつでもどこで好きなところに現れることができる。そういうものだった。ユウカたちもそれを知っているから驚いたりはしない。それよりもライブが終わってすぐに自分達のところに顔を出してくれたというのが嬉しかった。
「お疲れさまでした。私も楽しかったです」
そう言ったユウカに、レルゼーは少し俯いた。照れているのである。
「楽しんでもらえたのならよかった…。それが聞けたら十分。これからメンバーと打ち上げだから、戻る……」
そう言ってレルゼーの姿は空気に溶けるようにして消えた。バンドのメンバー達のところへ戻ったということだ。ユウカのことも大事だが、バンドのメンバー達のことも大事なのだから。
レルゼーは、邪神でありながらとてもそういうことを大切にしていた。邪神らしくいることができないここでは、レルゼー達邪神もそういう風に別の喜びを見出していたのであった。




