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王子だけど、地雷を踏むヒロインより悪役令嬢の義姉の方が素敵。

作者: 秋澤 えで

「シャングリア様!」

「こんにちは、アドリア嬢。」

「先日は危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」



ぺこり、と音が付きそうなほどに深く頭を下げる金髪碧眼の男爵令嬢。慌てて頭を上げさせるとニコリと笑ってみせる。



「誰であろうと、階段から落ちそうになっていれば助けますよ。わざわざ頭を下げることではありません。」

「でも、」

「アドリア嬢が頭を下げられては、貴女の素敵な笑顔が見えなくなってしまうでしょう?」



ぽ、と頬を染める彼女に可愛いなあ、と自然と思える。これが彼女の武器なのだろう。


ヘレン・アドリア。この王立アクティウム学園で彼女の名前を知らない生徒はいないだろう。

男爵令嬢であるが、平民上がりで学園内の平民も貴族も分け隔てなく仲良くする。可憐な花のような容貌もさることながら、心優しい性根、博愛精神で知られていた。少々マナーがなっていないものの、それも愛嬌とされている。


そんな彼女に甘いセリフを吐いているのは私、シャングリア・グナエウス。グナエウス王国の第二皇子である。

甘いマスクに白い肌、一度口を開けば紡がれる甘い言葉。誠実紳士の権化。線は細いが実は武闘派。それが私の周囲からの評価だった。

学園の有名人の一画を担う彼女と面識はなかったが、つい先日、階段から落ちそうになっていた彼女をたまたま受け止めたのだ。てっきりそれっきりとなるかと思ったが、彼女は律儀に私の元を訪れた。



「あのシャングリア様……、」

「何です?」

「その、先日日記帳を失くしてしまったんです。それでたぶん階段から落ちそうになった時に落としてしまったのですが、ご存じありませんか……?」



これくらいの、桃色の日記帳なんです、そう両手で四角を作りながら聞く。ああ、あざとい。だが可愛い。

桃色の日記帳。彼女らしい。



「あら、アドリアさん。まさかシャングリア様を盗人呼ばわりするおつもりなんですの!?」

「ミオス様!まさかそんなことっ!」

「なんてことでしょう!何て不敬なんでしょう!自分を助けた王子をそんな風に疑うなんて!品格を疑いますわ。」



呼ばれてないのに、突然乱入してくるご令嬢。パトラ・ミオス公爵令嬢。


彼女もまた有名人の一画だ。赤い髪に猫のような釣り目の強気美人。やることなすこと一見横暴なのに本当は親切にする仕方がわからないからそんな風になっているのだと周囲から認識されている、いわゆる公認のツンデレだ。

そして私の兄、第一皇子シュトラウス・グナエウスの婚約者でもある。


突然現れたパトラさんの言葉に周囲がどよめく。確かに聞き方が悪かった。パトラさんの言う通り、まるで私を疑っているように聞こえてしまう。

なんて失礼な!となじるパトラ。必死に弁解し私に謝るアドリア嬢。



「パトラさん、彼女が本当に疑っているわけではありませんよ。ただ落としたのを見ていないかと聞いただけでしょう。」



ねえ、と同意を求めれば必死に頷く。



「はいっそんなシャングリア様を疑う意図は全くありません!ただ落としたのを見てないかと聞きたかっただけなんです!」

「それを疑ってるっていうのよ。」

「まあパトラさん、そう怒られては、折角の美人が台無しですよ。」



眉を吊り上げ怒る彼女をなだめるように頬を撫でれば先ほどのアドリア嬢よろしく頬を染める。美人だが、やはり照れる様子は愛らしい。



「パトラさんも、アドリア嬢も笑顔が素敵ですから、私は貴女方の笑顔を見ていたいです。」



微笑めば二人して照れて微笑ましい気分になる。

平民上がりで礼儀に少し問題のあるアドリア嬢と第一王子の婚約者ミオス嬢の小競り合いは以前から学園内ではよくあることだった。

ちょっとした小競り合いを、穏やかな第二王子が宥め和解させる。そんな風景だ。



私の懐にアドリア嬢の日記帳が入っていなければの話だが。



アドリア嬢ごめんなさい。でも落としたあなたが悪い。

パトラさんごめんなさい。庇ってくれたけど肝心のブツは私が持っている。


本来なら盗人なんてとても柄じゃない。他人の日記なんて興味ない。だが彼女の日記は別だったのだ。

彼女が階段から去ってしまったあと、日記帳が落ちているのに気が付いた。ならば届けねばなるまいと思い、手に取ったら、たまたま、本当にたまたま中身が見えてしまったのだ。


日記の中身は日記ではなかった。そこには台本のようなものが書かれていた。



あらすじはこうだ。

男爵令嬢となった元平民のヒロイン。学園のなかで様々な男性と出会いながら攻略していくらしい。平民の友人は情報通でいろんなヒントをくれる。そして逆に悪役令嬢はヒロインをありとあらゆる手で貶めようとして来る。最後には、学園で出会った男性たちと結ばれ、悪役令嬢は国外追放され、ハッピーエンド。

ヒロインの名前はヘレン・アドリア。悪役令嬢はパトラ・ミオス。



彼女は随分と妄想力が豊かであるらしい。もしかしたら脚本家の才能があるかもしれない。だがしかし軽率に実在する人物の名を書くのはいただけない。学園の中で出会う男性たち、攻略キャラクターなる人たちは実際に存在する権力の強い貴族の生徒たち。悪役令嬢然り。おそらく情報通の友人も実在するのだろう。


さて困ったことがいくつかある。


パトラさんは悪役などではない。良い人だ。心優しく、気位高く、美しく、教養もある。完璧な令嬢で、私の姉だ。兄が彼女と結婚するのは普通にうれしい。政略だとしても、二人はお似合いなのだから。国外追放など、冗談じゃない。


ハッピーエンドがよくわからない。男性たちと結ばれて、ってとんでもない不義理じゃないか?多夫一妻制?この国ではそんな形認めてないし、いったい何をどうやったハッピーになれるのかわからない。もしみんな彼女を愛せば国内は大混乱だ。とんでもない悪女、傾城と彼女はなるだろう。


攻略キャラクターに兄のシュトラウスが含まれているのは、困る。兄はすでに婚約者がいるのだ。それなのに他の女性と結ばれるなんて、凄まじい不敬だし、信用は地に落ちる。


それと最後に。私が攻略キャラクターに含まれている。これはもう困惑しかない。


私は第二王子である。しかし私は女だ。

私は女だ。男の格好をしているが、女だ。


この国の慣習として、御王位継承権のある者は20歳になるまで女も男の格好をしている。現在17の私は女でありながら男の格好をしている。要は男装をしているのだ。

攻略されようがない。可愛いと思うがまかり間違っても結婚しようとは思わないし。


台本のメモには、攻略方法などが事細かに記されている。その細かさには寒気がしたが、私のところにはあまりかかれていなかった。


「攻略方法不明。難攻不落、気高い百合の隠しキャラ」


とだけあった。

アドリア嬢に突っ込みたい。


百合の隠しキャラって書いてあるじゃん。

私の方に来たら百合ルートってわかってるじゃん。

避けてよ。生産性のないことしようとしないでよ。


よくわからない言葉としては、「乙女ゲーム」「既知トリップ」「逆ハー」

乙女な試合とは……既に知った旅とは……逆ハーとは……訳が分からないが、もし彼女がこの台本通りに動こうと言うなら大問題だ。この国の情勢は荒れ果てるだろう。たった一人の少女によって。


そんなこんな。爆弾と言っても良い日記帳を読破してしまった私は完全に日記を返却するタイミングを失ったのだ。




*********




「兄上ー兄上―。」

「なんだい弟よ。」

「いや、妹ですけど……。パトラさんのこと好きですか?」



本を読みながら生返事をした兄シュトラウスだが、パトラさんの名前を出した途端身体ごとこっちを向け立ち上がる。



「当たり前だろう?可愛い可愛い僕のパトラ!強気で高慢に見えるのに本当は繊細で優しい女の子!しかも努力家で妃になったとき困らないための勉強もしっかりしてる、教養も品格もある素晴らしい女性!もはや神様が間違えて天使を人間として生まれさせてしまったような存在!ああパトラ!愛してる!!」



こっちが聞いてようが聞いてなかろうがお構いなしにひたすら語る。そして言いたいことを言い終わったら途端に糸が切れたようにソファに腰を下ろす。

兄の溺愛ぶりからして、パトラさんとの婚約破棄をするなんてことは天変地異してもあり得ないだろう。もし破棄しなくてはならなくなったらきっとシュトラウスはパトラさんを連れて亡命する。



「それで、なんで急にそんなことを聞いたんだいシャングリア。」

「いえ、兄上はよく女性から懸想されているようなので。パトラさんが不安に思ってないかなーって。」

「そんな!パトラが不安に思ってるって!?ならしっかり愛してるってことを教えてあげなくては!」



余計なことを言った気がする。なんかパトラさんが可哀想なことになる気がする。まあどうせパトラさんも兄上に夢中だから良いか、と自己完結する。

今にも部屋を飛び出しミオス家に向かう勢いだったシュトラウスがぴたり、と動きを止めた。



「シャングリア。」

「何ですか兄上?」

「そういえば軍の演習場にヒューイがいたぞ。この時間ならたぶんお前の相手をする暇もあるだろう。」

「兄上愛してますっ!」



満足げに部屋を飛び出していく兄に続き、私も部屋を飛び出す。

私がアドリア嬢に攻略され百合に走ることは決してない。

何故なら私には思い人がいるのだから。



「ヒューイさん!」



彼はすでに演習場にはいなかったが、王城から少し離れた広場にいた。


遠くからでも彼を見間違えることはない。銀色の髪に青い目、たれ目は優し気に細められ私を見た瞬間、めったに笑わないのに微かに微笑んだ。悩殺だ。悩殺スマイルだ。

ヒューイさんは護衛部隊の部隊長だ。無表情の時は少し怖いけれど、かっこいい。見た目は30半ばから40ほどに見えるけれど本当は20代後半で老け顔なのを実はすごい気にしてる可愛い人。


かっこいい可愛いかっこいい可愛いかっこいい……脳内テンションは正直パトラさんのかかわった兄上レベルだ。そういうところはやはり血筋だと思わざる得ない。



「シャングリア様。」



ああヒューイさんに呼ばれるだけで私の名前が福音のよう……と思っていたが、彼の隣にいる人物を見つけて顔面が凍り付く。



「シャングリア様っ!ヒューイさんってシャングリ様のお知り合いだったんですね。」



ヒューイさんの隣に、ヒロインことヘレン・アドリアがいた。青天の霹靂、雷に打たれたような気がした。

彼女の日記にはヒューイさんの名前はなかったので安全牌だと思っていたのに、これだ。ヒューイさんと、二人で、街にいる。何という大罪だろうか。何という泥棒猫だろうか。



「……こんにちは、アドリア嬢。貴女はなぜ、ヒューイさんと?」



笑顔が引き攣っていないか不安だ。しかし腰の剣に手を伸ばしてしまうのは止められない。もしここで彼女が答えを間違えれば彼女の人生はここで終了だ。



「街で買い物してたら、変な人に絡まれてしまったんです。そしたら近くにいたヒューイさんが助けてくれて、」

「へえ……、」



羨ましい妬ましい疎ましい……!私も暴漢に絡まれてヒューイさんに助けてもらいたい。だがしかし護衛部隊のヒューイさんに構ってほしくて小さなころから護衛部隊の訓練に勝手に参加してた私に勝てない相手なんてそういない。私が勝てないレベルの暴漢が来たらそれこそ形は共闘になるだろう。わあいどんなに頑張っても助けてもらうお姫様ポジションにつけない!ヒロインそこ代われ。



「シャングリア様はなぜここへ?まさかお一人で街におりてきたのですか?」



腹の底で渦巻く妬み嫉みを吹き飛ばすヒューイさんの言葉。少し咎めるような口調だが、いつものことと諦めの色を滲ませてる当たりが萌えポイントである。「やれやれ仕方ない子だ」みたいな感じが良い。ぐっとくる。



「兄上が、ヒューイさんが演習場にいたって聞いたので探したのですが、護衛隊の人が街に出たって言うので降りてきました。」

「何かあったのですか?」

「いえ、剣の相手をしてほしくて……、」



ここで姉上ことパトラさん直伝の、婦女子の武器上目遣い!

しかしヒューイさんにはこうかがないようだ。


全く表情が変わらない。そうですか、と私の頭を撫でるだけ。いや、撫でてもらえるのは昇天するくらいうれしいのだけど、この子ども扱いはいただけない。ただ見た目完全に男の私では効果は最初から望めないのかもしれなかった。



「シャングリア様は剣を嗜まれているのですか?」

「……ええ、多少ですが。」

「男らしくて素敵ですね!」



的確に地雷を踏みよったアドリア嬢。よりにもよって、ヒューイさんの前で。なんとか笑顔をキープするが、今絶対額に青筋浮いてる。



「もしよろしければ、見学させていただけませんか……?」



婦女子の武器上目づかいがさく裂。

しかし私に効果があるわけがない。心に余裕があれば可愛いな、くらい思うのだろうが、あいにくそんな余裕は微塵もない。私の目に映っているのは可憐な少女ではなく面の皮の厚い泥棒猫だ。



「はああ!?貴女どれだけ図々しいこと言ってるか、ご自分でわかっていらっしゃるの!?」



私の心を代弁するように現れたのは姉上ことパトラさん。神出鬼没、ヒロインの失敗をかぎつける能力は確かに悪役令嬢かもしれない。随分と苛立っているが、おそらくその一端はパトラさんの後ろから現れた兄上だろう。飼い猫だって、構いすぎれば飼い主に噛みつく。十中八九、兄上がパトラさんに構いすぎたのだろう。そして原因の一つは私だ。申し訳ない。



「そ、そんなつもりは……、ただ少し見てみたいと思って、」

「それが図々しいのよ。まさか男爵家の娘が約束もなく王城に行くおつもり?」



そうだそうだもっと言ってやれ!思いながらも表面上は少し困った顔をしておく。

パトラさんが代わりに怒ってくれたおかげで怒りが落ち着き余裕を取り戻す。


パトラさんの何が素敵って、単にヒロインの発言を批判してるだけじゃない。私の思いを慮ってくれているのだ。彼女は私の思い人がヒューイさんだと知っている。だからこの状況を読んであえてぶち壊しに来てくれたのだ。

救世主、救世主パトラさん!大天使!

対して兄上はヒューイさんを引っ張ってアドリア嬢から離すファインプレー!もしこのままアドリア嬢の側に置いていたら優しいヒューイさんのことだ。押され気味のアドリア嬢側につくのが目に見えている。そうなれば血を見ることになっただろう。


侃々諤々、パトラさんとアドリア嬢の口喧嘩。正論を全力で叩きつけるパトラさんと無知を振りかざすアドリア嬢。パトラさんの方が優勢だが、アドリア嬢も慣れたのか何なのか負けてはいない。

ただ聞き流していて、だんだん話がずれてきたのが分かった。さっさとアドリア嬢にはご帰宅願いたいのだが、粘る。パトラさんはパトラさんで、最初から彼女のことが気に食わないせいで論点がずれても口を休めない。



「シャングリア様、シュトラウス様、あのお二人は……、」

「大丈夫だよヒューイ。気が済んだら終わるさ。」

「そうですよ。姉上に任せておけば万事解決しますから。」



そう信じたかったが、何やらヒートアップしているようで、淑女であるはずのパトラさんが今にも掴みかかりそうになっている。

これはまずいかもしれない。



「あの、お二人とも、それくらいで、」

「シャングリア様っミオス様がっ!」

「シャングリア!きっぱり言ってあげて!」



そう親しくもないのに私に泣きつくアドリア嬢に少し退く。パトラさんも外では私のことを敬称を付けて呼ぶのに敬語すらも忘れている。少し怖い。けれど種を蒔いて丸投げしたのは私だ。責任はとる。



「アドリア嬢、とりあえずここは、」


「私とミオス様!どちらが可愛いですか!?」

「もちろん、私よね!?」


「……はい?」



何がどうあってそういう話になったのか。後ろで兄上がパトラだ―!!と叫んでいるが無視することにする。

ぶっちゃけ断然姉上、パトラ・ミオス嬢なのだが、流石にきっぱりと言うわけにはいかない。



「どちらも素敵ですよ。お二人とも愛らしく、美しい。簡単にはとても選べません。」



笑顔を引っ提げ、いつものように耳障りの良い言葉を吐く。しかしこれくらいで止められるかわからず内心ひやひやだ。



「じゃあ質問を変えます!シャングリア様はどんな方が好みですか!?」

「このっ……!?」



思わず絶句する。いくら混乱しているとはいえ、王族相手にこんなことを聞くのは凄まじい無礼だ。彼女の質問に皆が言葉を失う。あれほど怒っていたパトラさんでさえ、彼女のことによりクールダウンさせられたようだった。だが肝心のアドリア嬢はその様子にすら気が付かない。きっと話の脱線がひどいことにも気が付いていないだろう。



「ええ……好み、ですか……、」



いつもの可憐な顔でなくギラギラとした顔に怖くなる。アドリア嬢の化けの皮が強制的にはがされたようだ。隠れているものをいたずらに暴くものじゃないな。


しかしパトラさんを見てハッとする。すでに落ち着きを取り戻した彼女は流石だが、何か言いたげに口を動かしていた。なるほど、これはチャンスなのだ!



「そうですね……、」



しばらく考えるように間をあける。



「年上で、背が高くて、銀髪青目。気高く強い方、ですかね。あと大人っぽく落ち着きがあって、あと刀が扱える方とか、素敵だと思います。」



そう言って笑うと、アドリア嬢はぽかんとした顔をした。すっかり勢いを削ぎ落されたようで、いよいよ幼子のように見えてしまう。一方パトラさんは楽しそうに微笑んでいた。よくやった、とサムズアップしそうな勢いである。



「すごく、素敵だと思います。」

「そ、そうですか。それは、かっこいい女性ですね……。」



唖然茫然、そんな表情で彼女は言葉を選んで言った。なんともその姿が気まずそうで面白くなってしまう。いったい彼女の中で、私の好みの女性はどんな方になっているのだろうか。こみ上げる笑いは喉の奥で押し殺した。


さあ、いつまでも子供だと思ってもらっては困ります、とヒューイさんの方を見ると、びっくりしたような顔をしていた。どう思ったのかはわからない。それでも少しでも気が付いてくれると嬉しい。

兄上が肩を震わせて笑いを殺していたが、隠しきれていない。まあさっきのファインプレーに免じて不問にしておく。



茫然自失、と言うよりも何か考え込んだアドリア嬢は一人私たちから離れ喧騒に消えていった。無事に帰れていると良いが、まあ大丈夫だと信じてる。



後日、学園内で第二王子のシャングリア・グナエウスの好みの女性は「姉貴肌の色素の薄い、刀を扱うゴリラ」という不本意極まりないうわさが流れた。

悪役令嬢に、手を出したところわけがわからなくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 男装の王子ってちょっともう意味がわからないですね
[良い点] これ、悪役令嬢ジャンルじゃないですよね!(笑) 新しくて、大変楽しませていただきました! 続きが読みたいです。 短編のままでシリーズ化してくれないものでしょうか。
[一言] 続きが読みたいです
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