プロローグ 家族になるために
子供っぽい僕が大人っぽい彼女に会うまでのお話し
ある日、父親が死んだ。
もともと体が弱かった父はいつ死んでもおかしくなかった。
死因は分かっていたけども、知りたくなかった。
それから、母親が再婚した。
母親からは訳があるとだけ言われて自分も了承した。
母親も辛いのだろうと思った。
そして再婚相手と会った。
再婚相手は自分たちと同じ境遇の人だった。
つまり、相手に先立たれて子供と自分が残った人だ。
そこで母の言っていた再婚の訳が分かった。
お互いに育児困難を乗り越えるためと、傷のなめ合いのために。
最後に僕は、再婚相手の子供の少女に会った。
「お義父さん、おはようございます。」
「おはようって、もう昼だよ ぼっくん。」
再婚相手と生活二日目。
僕はそれなりに仲良くしようとしていた。
「もう出発するのですか?」
「うん。もうあと数十分でアメリカ行きの便が来ちゃうからね。」
この人は、再婚してからさっそく海外出張する気のようだ。
再婚する前からしている仕事だそうで年収も良いらしい。
となると、僕も母さんも止めない。お金が欲しいから。
「っとそうだ、ぼっくん。今日だからね。」
「今日だからねって、なんですか?」
「僕の娘がお泊まり会から帰ってくるのだよ。」
「あー、そっか。」
「そうだよ。君と初めて会うんだから忘れないでよね。」
「すいません。」
中学生にもなってお泊まり会いとかすげぇなその子・・・。
「そういえば、娘さんのお名前なんでしたっけ?」
「ミキって名前だよ。あとぼっくん、君の家族になるんだからそんな言葉使わなくていいんだよ?」
「そう・・ですよね・・ハハッ」
「僕も君もおんなじ境遇だったから、今すぐ家族になれっていうのは難しいことかもしれないけど、お互いこれからだと思うから。頑張っていこうね?」
「はい」
「じゃあ、娘をよろしく。皆に行ってきますと伝えておいてね。」
「母さんも起きてくればいいのに、眠ってて・・その・・」
「いいんだよ、僕達も忙しいから。」
「そうですか・・・。じゃあ、いってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
「・・・さて、部屋に戻るか。」