二話
今回も淡々と書いていったので、薄味になっていると思います。
むしろ、そういう方向性で書いていく予定なので、嫌いになった人は他のメンバーの作品を読んでください。
中に入り、小さな声で話しかけた。
それは本当に小さな声で、自分でも声になったのか分からないくらいだった。
店のおばちゃんは、奥にある小部屋でテレビを見ていた。
商品の置かれたテーブルが中央にあり、あの子はそれ向こう側。
さすがに聞こえないだろうと思い、もう一度口を開いた時だった。
さらりとした黒髪をなびかせ、あの子はこちらを振り向いた。
少し微笑んで。
声をかけたまでは良かったのだが、その後の言葉は考えていなかった。
俺は焦った顔をしてあの子を見ていた。
あの子は微笑んだまま俺を見ていた。
脳内で何か適当な言葉を探していた時、あの子の方から、ゆっくりと近寄ってきた。
そうして俺の体を上から下までじっくりと眺めた後、そよ風が吹いたみたいに、またゆっくりと戻っていった。
いったい何をされたのか、何をしたいのか分からなかった。
言葉を探すという作業は、いつの間にか休止されていた。
定位置に戻ったあの子は、さっきみたいに微笑んで俺を見つめた。
自然と口から出された言葉は、あの子が誰なのかを訊く質問だった。
普通と言ったらふつうだった。
ワンピースの裾の部分を少しだけ揺らしただけで、あの子は答えなかった。
しばらくの沈黙の後、俺は違う質問をした。
小さな声で。
質問の答えより、あの子の声を聞いてみたかった。
またワンピースが揺れた。
しかし今度は唇も動いた。
声は出していなかった。
少なくとも、俺には聞き取れなかった。
おばちゃんが見ていたテレビの音が聞こえた。
フッと我に返り、時計を少し見た。
あの子との会話は、とても長く感じた。
俺が店に入ってから、20分以上が経っていた。
あの子は表情を変えず、まだ俺を見つめていた。
小さく別れを告げ、俺は駄菓子屋を出た。
駄菓子屋の構造は、作者の家の近くにある駄菓子屋がモデルです。
あんまり関係ないですけどね。