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Yesterday  作者: 健司
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再会

2度目に彼女にあったのは、妙に日差しが強い秋の昼下がりだった。僕はその日ビルに7階にあるお客さんのオフィスにいた。商談がまとまったのでそこをあとにして、エレベーターで1階へ下りた。エレベーターのドアが開き、何人かが先に降りて、僕も降りた。見慣れた制服を着た女性が大きな書類袋を抱えて皆が降りるのを待っていた。その制服はたった今僕が出てきた会社のものだった。そして僕は彼女を見た。


 どんな娘だろう。


 顔を見て、目が合って僕の呼吸は何秒か止まった。


 彼女だ。


 そこに立っていたのは、紛れもなくこの間の彼女だった。地下鉄を降りるときに僕に


 ありがとう


と目で語りかけてくれた彼女だった。気がつかないふりをして彼女の横を通り抜ける僕。彼女は何事もなく平然と僕が降りたエレベーターに乗り込んだ。


 2週間ほどして僕は再び彼女の会社を訪ねた。プレゼンテーションを行うため、同僚のCMプランナーが一緒だった。受付の女性は僕たちを応接室に通し、しばらく待つように告げた。僕と同僚はプレゼン前の最後の、でもとても簡単な打ち合わせを行った。話が途切れ、ふと僕は思った。


 彼女はどこにいるのだろう。


 確かにこの会社のどこかで彼女は働いている。


 気がつくと部屋のドアをたたく音がした。お茶を用意した女性が入ってきた。お茶を出してくれたその女性を見上げると、そこに彼女がいた。胸元のネームプレートを見ると、


 秘書課 高野悦子


と書かれていた。思わず、僕は言った。


 この間はどうも。


彼女は


 こちらこそ。ありがとう。


と微笑み、答えた。

一緒にいた同僚は、僕たち二人を何か不思議なものでも見るように眺めていた。




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