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待ってるぞ、相棒
俺は講義棟三階の窓から望遠レンズを構えていた。狙うは部室棟裏の暗がりにいる演劇部に入ったばかりの新入生カップル。なにやら親密そうに手を繋いでいる。
「ふふふ、阿呆な新入生どもめ。貴様らの痴態は、このカメラに収めたり!」
俺はシャッターを切った。楽勝だぜ。
ゴールデンウィークが明けて三日が経っていた。新入生は大学生活にも慣れてきて、じゃあここらで恋人でも狩りにいくか、などと企て、その結果がそこにいる阿呆カップル、というわけだ。この写真は部室のドアに四つ切サイズで貼り付けてやる。
その時、ズボンのポケットの中の携帯電話が震えた。出てみると緒仁駕原からだった。
『工藤、緊急事態だ。すぐ来てくれ』と緒仁駕原が言った。声は緊迫感に満ちていた。これはただ事ではない。
「どうしたんだ?」
『夢の城からチビ縄と竜宮下先輩が出てきたんだ』
「何!? 藤縄と竜宮下さんが!? それは演劇部、いや大学中を揺るがす大スキャンダルだぞ! 俺もすぐ現場に急行する!」
『おう! 待ってるぞ、相棒』