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コイコイコイ  作者: カカオ
パパラッチVSパパラッチ
13/19

わかる人にはわかる

 撮った写真をスキャナーでPCに取り込む作業は、なんでこうも眠くなるのだろう。やはりその単調さに問題があるのか。世の中に存在するこういった作業的動作は、「何かをしながら」取り組むべきなのかもしれない。そうでないと、『俺は大学に入って何を学んだ?』『俺に彼女ができないのはなぜなんじゃ?』『そもそも人生とはなんぞや?』などの先送りすべきイタイ問題の数々について考え出してしまうからだ。

 そんなわけで、俺は好きなロボットアニメ『機動猫戦士ニャンダム(劇場版)』の音楽をかけながら作業している。


 タイ 

震えーる 

タイ 

それは 

新鮮の証


 なんて平和で意味のない歌なんだ。そうだ。意味なんぞ求めてはいけない。俺はカメラを持って目の前の風景と部員達のスキャンダルを撮り続けるのだ! そうすればきっと活路は見つかるぜ! 俺はここで写真を撮っていてもいいんだ! おめでとう俺、おめでとう俺、おめでとう俺――。

 などと自分で自分を祝福しているうちに写真のスキャンが終わり、俺は早速自分のウェブサイトにそれをアップした。サイトにアップするのはいつもの演劇部の連中のスキャンダラスな写真ではなく、健康的な風景写真ばかりだ。これは将来写真家になるための布石なのだ。

 写真をアップすると、俺は一旦PCから離れ、台所でココアを淹れた。冬はココアに限るぜ。

 ココアをすすりながらサイトの掲示板をチェックすると、早速書き込みがあった。


『新しくアップされた写真、早速拝見しました。いつも思うのですが、クドゥさんの撮る写真は、どうしてこうも色鮮やかに写るのでしょうか。色合いだけでなく、構図の決め方も素敵です。色鮮やかに写る海からは力強さと切なさが感じられます。次回作も楽しみにしています。モモ子太郎』


 わかる人にはわかる、と俺は思った。モモ子太郎さんほどの慧眼の持ち主はそうはいないぜ。

 俺はモモ子太郎さんに丁寧に返信のコメントを書き、ココアを飲み干すと、電気ストーブを消して布団の中に潜り込んだ。ストーブを消すと、あっという間に部屋の温度が下がって冷え込んだ。

 俺がもぞもぞと布団が温まるのを待っていると、机の上の携帯電話が鳴った。だがメールの着信音だったから無視した。布団の外は極寒の寒さなのだ。南極観測隊のごとく布団の中で寒さに耐えている俺が布団を剥いでまで起き上がるわけがない。大体、布団の中でもぞもぞしている時にメールしてくるなんぞ、ろくなやつじゃねえな。大方、藤縄あたりだろうさ、と俺は見当をつけた。

 十秒後、俺は眠りの海へぶくぶくと沈んでいった。

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