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誰かが生きるために、誰かは切られる

歪んだ空間の溜まり場。


“焚き火”のような目印は、

以前よりも大きくなっていた。


存在密度が、

集まりすぎている。


「……増えすぎだ」


レオンは、

小さく呟いた。


集団は、

十三人。


生き延びるには――

多すぎる。


「……でも」


女の一人が、

声を上げる。


「人が増えた方が、

 生存率は上がる」


「短期的にはな」


レオンは、

静かに返す。


「……言い方」


空気が、

少し張りつめる。


影の人――

最初からいた存在が、

掠れた声で言う。


「……ここは、

 溜まり場だ」


「永住地じゃない」


「分かってる!」


別の男が、

声を荒げる。


「でも……

 一人じゃ、

 生き残れないだろ!」


沈黙。


それは、

事実だった。


レオンは、

一歩前に出る。


「……決める必要がある」


「二つだ」


「ここを、

 移動拠点にするか」


「それとも――」


「切り捨てるか」


空気が、

凍る。


「……何を?」


「人数を」


即答。


「ふざけるな!」


「人を――

 数字で見るのか!」


怒号。


悲鳴。


「違う」


レオンは、

声を張らない。


「数字で見ないと、

 全員死ぬ」


「……!」


「ここは、

 資源がない」


「観測されやすくなる」


「歪みが、

 寄ってくる」


「……近いうちに、

 ここは壊れる」


誰かが、

震える声で言う。


「……じゃあ」


「誰を、

 残すんだ」


沈黙。


「……基準を、

 決める」


レオンは、

歯を食いしばる。


「判断を、

 俺がやる」


一瞬。


「……は?」


「……それは、

 違うだろ」


「一人に、

 背負わせるな」


レオンは、

首を振った。


「背負う」


「判断が、

 必要だからだ」


「……だったら」


一人の男が、

前に出る。


「俺は、

 別の道を選ぶ」


「……?」


「人数を減らさない」


空気が、

張り裂ける。


「移動しながら、

 生き延びる」


「危険でも、

 それしかない」


「……無理だ」


レオンは、

即答する。


「歪みは、

 追ってくる」


「……それでもだ!」


男の目は、

真剣だった。


「誰かを、

 切るくらいなら」


「全員で、

 死ぬ方がマシだ!」


沈黙。


影の人が、

低く言う。


「……それは」


「きれいな考えだ」


「でも――」


「ここでは、

 死ぬ」


男は、

歯を食いしばる。


「……じゃあ」


「ついてこない奴は、

 どうする」


レオンは、

答えた。


「止めない」


一瞬、

全員が凍る。


「……え?」


「選択は、

 自由だ」


「評価も、

 管理も、

 ない」


「……だから」


「命の責任も、

 自分で取る」


空気が、

割れる。


「……レオン」


女が、

小さく言う。


「それは……

 裏切りだ」


「……違う」


「これは――

 分裂だ」


男は、

背を向ける。


「……俺は行く」


「ついて来たい奴は、

 来い」


四人が、

動く。


誰も、

止めない。


レオンは、

最後まで見送る。


(……これで)


(助かる人数は、

 増える)


《取得》


《非可逆判断》


《精神負荷:大》


焚き火のようなものが、

小さくなる。


残ったのは、

八人。


沈黙。


「……俺は」


レオンは、

言葉を絞り出す。


「正しいとは、

 思ってない」


「でも――」


「生き残るには、

 これしかない」


誰も、

答えない。


遠く。


歪みの向こうで、

“鳴き声”が近づく。


「……来る」


影の人が、

呟く。


「……レオン」


「お前は、

 もう」


「戻れない」


レオンは、

静かに頷いた。


(最初から、

 戻る道はなかった)


追放された最弱は、

この日。


初めて――


誰かを救うために、

 誰かを

 見捨てる判断をした。


それは、

英雄の選択じゃない。


生存者の選択だ。

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