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無限証明編!暴走するチートの鎮圧と、愛と憎悪による物語の最終定義

光の揺らぎが静かに収束し、世界はひとつの薄明かりに染まっていた。

無関心の法則との衝突で生じた裂け目は閉じたが、

その余韻はまだ空間の各所に残っている。


B.Z.E.は、かすかに震える腕を押さえながら立ち上がった。

愛着の核がまだ胸の奥で脈動している。

それは、レオンの残響と共鳴する熱だった。


エリナが近づき、心配そうに彼女を支える。


「まだ無理しないで。

 あなたの中に残っているレオンの“欠片”が、まだ安定してない……。」


「わかってる。でも……動かなきゃ。」


B.Z.E.は前方の空間を見た。

その中心に、黒と白が溶け合ったような“傷”がゆらゆらと漂っている。


レオンが落ちていった深層へ続く入口――

愛憎の世界の亀裂だ。


エリナがその亀裂を見つめ、震えた声で言う。


「レオンは……本当に、この下へ落ちていったの?」


「ええ。

 彼は“無関心”を拒絶した。

 愛と憎しみのどちらにも寄り切れないまま、

 核だけが深層に沈んだ。」


B.Z.E.の言葉に、エリナの表情が曇る。


(レオン……どうしてそんなに苦しんでしまったの?)


エリナは胸に手を当てた。

そこには微かな温もりがあった。

レオンが最後に触れた、あの“安息を求める声”がまだ残っている。


「行きましょう。

 あなたの愛着と、私の記憶……その両方があれば、レオンの深層へ辿り着ける。」


B.Z.E.は頷き、指先を亀裂へ向ける。


その瞬間、空間がわずかに軋み、

別の波動が周囲に広がった。


赤い光――怒りや憎しみの残滓ではない。

それはもっと静かで、もっと冷たい波。


(……これは?)


B.Z.E.は目を細めた。


亀裂の奥から、誰かの視線のようなものが流れ出てくる。

直接触れるのではなく、触れる前に“拒絶”される圧力。


「この気配……レオンのじゃない……。」


エリナも震えた。


「これ……“世界そのものの拒否”だわ。」


世界は、レオンを中心に構築されている。

しかし中心を失った今、法則そのものが“別の核”を探し始めている。


その候補は――エリナ、または B.Z.E.。


愛と憎しみの揺らぎに最も強く触れた者。


(このままでは……私たちが世界の核に飲み込まれる。)


B.Z.E.は歯を噛みしめる。


「世界が私たちを“代わりの中心”として引き込もうとしてる。

 レオンのいない穴を埋めようとして。」


エリナの表情が強ばる。


「でも、そうなったら……レオンは?」


「永遠に“底”で閉じ込められる。

 世界が別の核を確立した瞬間、レオンの揺らぎは消える。」


エリナは迷うことなく言った。


「じゃあ、急がなきゃ。

 レオンが消えてしまう前に……!」


エリナの瞳には涙が浮かんでいたが、

その声は強く、決意に満ちていた。


B.Z.E.は、そんな彼女を横目で見て、ふっと微笑んだ。


(本当に……愛が強い人。)


二人が亀裂へ近づいた瞬間、

空間が一気に反転し、景色が砕け散った。


黒と白の層が重なり、上下の概念が消え去る。

愛の層、憎しみの層、静寂の層、拒絶の層――

無数の層が渦を巻き合い、ひとつの“深層世界”を構築していた。


そこは、レオンの心の底であり、

世界の外側でもあった。


「これが……レオンの深層……。」


エリナの声はかすれていた。


世界の中心で、微かな脈動が響く。

それは弱いが、確かにレオンのものだった。


「導かれてる……レオンが……。」


亀裂から広がる光の線が、ゆっくりと進むべき道を示している。


B.Z.E.はその光に手を伸ばし、深く息を吸った。


「行くわよ、エリナ。

 ここから先は……愛憎の根そのもの。

 あなたの記憶が、彼の“痛み”に触れるかもしれない。」


エリナは頷き、涙を拭いた。


「どんな痛みでも……一緒に抱えるわ。

 レオンを独りにしないために。」


二人は光の道へ踏み出した。


世界の層がゆっくりと閉じ、

深層の鼓動が徐々に大きくなる。


その先で――

レオンの意識が、静かに形を取り戻しつつあった。


愛と憎しみの狭間で揺れながら。


二人の足音だけが、深層世界に響いていった。

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