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辺境では、最弱だった俺が“普通に無双している”

辺境の街・リュスト。


朝の掲示板前は、

いつもより人が多かった。


「おい……

 この依頼、報酬おかしくないか?」


「Aランク指定だぞ?

 辺境だぞ、ここ」


「しかも……

 単独可?」


ざわつく冒険者たちの視線が、

一人の青年に集まる。


レオンだった。


「……これでいいか」


彼は、依頼書を一枚剥がす。


《高位魔獣討伐

 危険度:A

 単独行動可》


周囲が、どよめいた。


「マジかよ……」

「本当に一人で行くのか?」

「死ぬぞ……普通は」


だが――

レオンは、気にしていない。


(Aランク相当、って言われてもな)


実感が、ない。


森に入って、数時間。


魔獣の気配が、濃くなる。


「……来た」


茂みを割って現れたのは、

巨大な鎧熊アイアンベア


鋼のような毛皮。

正面から戦えば、

熟練パーティでも苦戦必至。


だが――


「遅い」


レオンは、静かに踏み込んだ。


一歩。


距離が、消える。


「なっ――」


熊が反応する前に、

剣が振り抜かれる。


斬撃。


衝撃。


鎧ごと、真っ二つ。


ドォン、と地響きを立てて、

巨体が倒れた。


戦闘時間――

三秒。


《収納》が、即座に反応する。


《取得:

 耐久補正

 筋出力補正

 魔力耐性》


「……はいはい」


レオンは、もう驚かない。


(倒したら、入る。

 考えるだけ無駄だな)


死体は、

いつも通り、静かに消えた。


帰還。


街門の前で、

待っていた者たちがいる。


「……本当に倒したのか?」


衛兵の問いに、

レオンは無言で素材袋を置いた。


鑑定。


数秒。


「――本物だ」


ざわっ。


「一人で……?」

「嘘だろ……」


視線が、

尊敬と畏怖に変わっていく。


ギルド。


受付嬢が、

一瞬、言葉を失う。


「……えっと……

 確認しますね」


端末を操作し、

目を見開く。


「……討伐完了。

 しかも、損傷なし……」


「報酬、受け取ります」


レオンが言うと、

彼女は慌てて頷いた。


「は、はい!

 えっと……追加報酬も……」


(増えてるな)


レオンは、内心で思う。


評価が上がると、

世界が露骨に優しくなる。


その夜。


宿の食堂。


冒険者たちが、

酒を片手に囁いている。


「聞いたか?

 あのAランク熊、瞬殺だってよ」


「辺境の守護神かよ……」


「近づかないほうがいいな」


《外部評価:安定

 取得効率:高》


《収納》の反応も、

穏やかだ。


(……平和だな)


レオンは、

スープを一口飲む。


だが。


ふと、気づく。


(……静かすぎないか?)


街が、ではない。


世界そのものが。


魔獣が、

こちらを“待っている”ような感覚。


依頼が、

都合よく集まる感覚。


評価が、

綺麗に積み上がっていく感覚。


(……楽すぎる)


《収納》の奥で、

小さな表示が瞬いた。


《警告:

 取得速度、想定値超過》


一瞬で、消える。


「……今のは?」


誰も、気づいていない。


世界は、

何事もないように回っている。


レオンは、剣を置き、窓の外を見る。


星空は、変わらない。


だが――


(俺が、強くなったんじゃない)


(強く“させられてる”だけじゃないのか?)


その疑問は、

まだ形にならない。


だが確実に、

胸の奥に引っかかった。


追放された最弱は、

今日も辺境で無双する。


何の苦労もなく。

何の代償も、見えないまま。


だが――


楽な物語ほど、

 後から請求書が来る。


レオンは、

まだそれを知らない。

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