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世界の核 ― 光の内側で響く声

光の門をくぐった瞬間、

空気が変わった。


温度でも、匂いでもない。

“世界そのものの気配”が、全く違う。


影は振り返る。

外の森はもう見えない。

門は静かに閉ざされ、そこにはただ柔らかな光だけが残っていた。


――“ここが……世界の中……?”


レオンは周囲を慎重に観察しながら答えた。


「ここは“現実になる前の未来”が流れている場所だ。

 世界が形を作る直前の層……

 言うなれば、世界の心臓の中。」


影は不思議な浮遊感に包まれる。

足元は確かに地面なのに、踏むたびに広がる波紋は光でできていた。

空も、天井ではない。

無数の細い糸のように光が編まれ、

まるで世界が自分を織り上げようとしているようだった。


――“……生きてるみたいだ。”


「生きてるんだよ、影。

 世界は思考して、選んで、動いてる。」


影はあたりを慎重に見渡す。


そのときだった。

光の糸が揺らぎ、微かな声が響いた。


《……誰……?》


影は思わず身を固くする。


――“レオン、今の……?”


「聞こえた。

 この場所には“意志”がある。

 影を呼んでいるのかもしれない。」


《……そこにいるのは……選んだ者……?》


声は幼くもあり、老いてもいるようでもあり、

誰とも特定できない声だった。


影は胸に手を当てた。


――“俺を……呼んでる。”


光が揺れて、ひとつの形が現れた。

人の形にも見えるし、

動物にも、風にも見えた。


世界の核の守り手──

そんな雰囲気を持つ存在。


《影。

 あなたは、まだ不確かな未来。

 けれど……確かに“歩んだ”未来。》


影は一歩前へ進む。


――“俺のこと……知ってるの?”


《知っている。

 あなたが“選ばれなかった未来”だった頃から……ずっと。》


影の胸が痛む。

それは、自分の過去の痛みに似ていた。


レオンが静かに影の背を押した。


「影。

 行け。

 世界はお前と話したがってる。」


影は頷き、

光の存在の前に立った。


その瞬間──

光が影の胸へ触れた。


記憶が流れ込んだ。


未来を奪われていた頃。

存在がかすれて、誰にも見えなくて、

ただ消えていくのを受け入れるしかなかった時間。


影は苦しそうに胸を押さえた。


――“う……っ……”


光の存在は言った。


《痛むのは、あなたが“未来を取り戻したから”。

 この痛みを越えた者だけが、

 自分の道を創れる。》


影は震える呼吸を整えた。


――“……それでも進みたい。

 俺……もう、昔みたいには戻りたくない。”


光は優しく揺れた。


《では、ひとつ問う。

 影よ──

 あなたが望む未来は、誰のもの?

 レオンの未来?

 世界の未来?

 それとも……自分の未来?》


影は言葉に詰まった。


レオンは影を見つめる。


「影。

 答えなくてもいい。

 でも……考えることはやめるな。」


影はゆっくりとレオンに視線を向けた。


――“レオンの未来も、世界の未来も、大事。

 でも……

 俺は……俺自身の未来も、大事にしたい。”


光は静かに輝きを増した。


《影よ。

 それが“あなたが来た理由”。

 世界の核は……

 あなたに自分の未来を選んで欲しかった。》


影は驚いた。


――“俺が……求められてた……?”


《あなたは長く、“選ばれなかった未来の象徴”だった。

 でも今は違う。

 あなたは──

 “世界の選択そのもの”になりかけている。》


レオンが息をのむ。


「影……それは……」


光が影へ近づいた。


《だが、その力はまだ不完全。

 だからこそ、あなたはここへ来た。

 影。

 あなたはこの世界に、何を望む?

 何を創りたい?

 何を守りたい?》


影は胸に手を置き、

ゆっくり言葉を紡いだ。


――“俺は……

 “誰かの未来を奪わない世界”が欲しい。

 俺みたいに、忘れられる未来がなくなるような……

 そんな世界が……いい。”


光は大きく揺れ、

優しい音を響かせた。


影は、光に認められたのだ。


レオンが影の肩に触れた。


「行こう、影。

 次は“未来を創る旅”だ。」


光の存在が道を開く。

その先は広大な白い空間へ続いていた。

まだ何も描かれていない

“純粋な可能性の場所”。


影は一歩踏み出した。


その一歩は、

世界そのものに新しい脈動を生んだ。


影は振り返らず、

光に満ちた未来へ進んでいった。

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