光の門の向こう ― 世界の核が見せる本当の姿
光の門の前に立つと、
影は思わず息を呑んだ。
門は巨大だった。
まるで山脈そのものが光になったような、
圧倒的な存在感を放っている。
近づくにつれ、影の胸が強く脈打つ。
自分の心臓ではなく、
“世界の心臓”に脈を合わせられているような感覚だった。
――“レオン……ここ、本当に入っていいのかな。”
レオンは光を見上げながら言った。
「影。
この門は“お前の行動”に反応して開いた。
入る資格がなきゃ、そもそも姿すら見えなかったはずだ。」
影は拳を握りしめる。
――“資格……俺にそんなものが……?”
「あるさ。
お前が選んできた未来そのものが、証明してくれてる。」
影はゆっくり頷いた。
だがその瞬間──
光の門が、低い音を響かせた。
門の表面に、
無数の“影のような模様”が浮かび上がる。
レオンが剣に手をかける。
「来るぞ、影。
これは……“門の意思”だ。」
影は身構える。
模様が揺れ、
そのひとつが形を持ち始めた。
それは──
影の影だった。
黒い人影が、門から抜け出るように立ちはだかった。
その体は揺らぎ、しかし確かに影と同じ輪郭をしている。
影は思わず一歩下がった。
――“これ……俺……?”
黒い影は言葉を持たない。
だが目だけが、影を真っ直ぐに見つめていた。
レオンが静かに言う。
「影。
これは“お前が捨ててきた未来”の象徴だ。
世界の核は、お前の過去を見逃さない。」
黒い影は、足元から黒い霧を立ち上らせた。
それは何かを奪う霧ではなく、
“何かを訴える霧”だった。
影はその霧に触れた瞬間、
胸に痛みが走った。
――“あ……っ……
これ、前の俺の……気持ち……?”
影の脳裏に流れたのは、
・選ぶことが怖かった自分
・消えるのを待つだけの自分
・レオンにすがるしかなかった日々
・未来なんて欲しくないと思った瞬間
そんな“かつての影”のすべて。
影は呼吸が乱れた。
――“嫌だよ……こんなの見たくない……”
レオンが影の肩に手を置いた。
「影。
前に進むためには、
“昔の自分”と向き合わなきゃならない時がある。」
黒い影は一歩前へ進む。
影もまた、一歩後ろへ下がった。
――“あっちは……俺みたいなのに、迷いがない。”
「違う。迷ってないように見えるだけだ。
あれは“選ばなかった未来”。
一度も“選ぶ痛み”を知らなかった影だ。」
影は小さく震えた。
黒い影は夜のように静かで、
そして恐ろしいほど冷たかった。
影が震える声で言う。
――“レオン……どうすればいいの……?”
レオンは言った。
「影。
あれは“否定する存在”じゃない。
“超えるべき自分”でもない。
ただ……“抱きしめるべき過去”だ。」
影は目を見開いた。
――“抱きしめる……?”
レオンは頷く。
「忘れたふりをしても、
捨てたふりをしても、
影の過去は消えない。
それを受け入れた者だけが、
世界の核へ進める。」
影は、小さく息を吸った。
黒い影は何も言わない。
ただ、待っている。
向き合ってくれるのを。
影は震える足で、一歩、前へ踏み出した。
――“……怖い。
でも、逃げたくない。”
黒い影は影の動きに反応し、霧を弱めた。
影はそっと手を伸ばす。
自分の過去へ。
選べなかった未来へ。
そして──
その影を抱きしめた。
冷たい感触だと思った瞬間、
胸の奥に温かさが広がった。
黒い影は、
霧となって影の胸へ溶け込んでいく。
影は涙を流しながら呟いた。
――“……ごめん。
あのときの俺を……ずっと置き去りにしたままで。”
霧は完全に消え、
影の胸の内に静かに収まった。
レオンが言った。
「よくやった、影。」
光の門が揺れ、
ゆっくりと開き始めた。
世界が、影を
“過去と向き合った存在”として認めたのだ。
影は涙を拭き、
前を見た。
――“レオン。
……行こう。”
レオンは頷いた。
二人は光の中へ踏み出した。
未来を選び続けるために。




