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光の道が示す先 ― 世界の核へ向かう旅の始まり

夜の森は深い静寂に包まれていた。

風は止まり、枝一本すら揺れない。

まるで世界が息を潜め、レオンたちの行動を待ち構えているようだった。


レオンは木々の間を進みながら、周囲の空気を探った。

まだ、あの“介入の気配”は残っている。

52話で遭遇した白いひずみ――あれはほんの入口にすぎなかった。


背後を歩くB.Z.E.が静かに口を開く。


「気配は消えてないわね。

 この森全体が、何かに触れられた跡みたい。」


レオンは短く答える。


「……ああ。

 世界の“書き換え”があった痕跡だ。」


それは読者の声のように軽いものではない。

期待、批判、感想――そういった言語的影響とはまったく別の次元。


これはもっと直接的な力だ。

“物語の内部構造そのものに触れる手”。


レオンは歩を止め、一本の木に触れた。


表皮が不自然に削れている。

剥がれた部分には、まるで誰かが急いで描き換えたような歪みが浮かんでいた。


「……ひどいな。」


B.Z.E.が眉をひそめる。


「自然に枯れた木じゃない。

 存在ごと“編集”された。そう見えるわ。」


レオンは小さく笑った。


「編集、ね。

 世界を好き勝手に書き換える奴がいるってわけだ。」


森の奥から、低いうなりが響いた。

獣の声ではない。

世界の内部構造が揺れる音だ。


レオンは即座に武器を構えた。

その瞬間、空気の膜が破れるように裂け、森の中央がぐにゃりと歪む。


影の塊のようなものが姿を現した。

しかし獣ではない。

それは“存在の形を持たない存在”だった。


黒い影の中心に、走査線のような白い光。

目にも見え、目では捉えられない。


B.Z.E.が低く呟く。


「……これは、世界の生き物じゃないわ。」


レオンは影を睨む。


「世界に紛れ込んだ“修正者”か。」


影が反応したように揺れ、白い光が瞬く。

言葉の代わりに、意味だけが直接伝わってくる。


――観察。

――評価。

――調整。


レオンは歯を食いしばった。


「俺たちを……“素材”扱いしてるのか。」


影が跳ねた。

攻撃というより、修正のための“接触”だ。


レオンは剣を振り上げ、影の突進を弾き飛ばす。

だが影は一度崩れても、すぐに形を取り戻した。


(これは……倒す相手じゃない。

 追い払っても無意味だ。)


「B.Z.E.、下がれ!」


レオンの叫びと同時に、影は空中で形を変える。

人の腕にも、数字の列にも、獣の頭にも。

どれも中途半端で、どれも未完成。


“完成させる必要がない者”。

“存在の形を問われない者”。


B.Z.E.がレオンに声を飛ばす。


「レオン! これ……直接触れちゃダメよ!

 記憶が書き換えられる!」


レオンは影の動きを読み、森の開けた場所へ誘導する。

影は“観察”“記述”“補正”を繰り返しながら追ってくる。


(俺の動きに反応して……学習してやがる。)


足場が崩れ、レオンは森の中心へ跳び込んだ。

影も同じ軌道を描いて追いかける。


その瞬間、レオンは掌を大地に押し当てた。


深層で得た“意志の力”が地面に流れ込み、

森を覆う歪曲が一瞬だけ晴れた。


光が炸裂し、影が後方へ弾き飛ばされる。


B.Z.E.が駆け寄った。


「今のは……?」


レオンは肩で息をしながら答える。


「世界の“根”を一瞬だけ正規状態に戻した。

 あいつは歪みの中でしか動けない。

 だから吹き飛んだ。」


影は遠くで揺れていたが、起き上がる気配はない。

存在の形が保てないのだろう。


レオンはゆっくり立ち上がった。


「わかった。

 あれは干渉そのものじゃない。

 干渉を実行するための“器”だ。」


B.Z.E.が眉を寄せる。


「じゃあ……本体が別にいる?」


レオンは頷く。


「いる。

 この世界を書き換えている奴が、どこかに。」


夜の森が静まり返る。

風が戻り、草木がそよぐ。

影の残滓はすでに消え、ただ空間に薄い波紋だけが残っていた。


レオンは空を見上げる。


(絶対に見つける。

 この世界を歪める“手”を。)


闇の奥で、かすかな光が瞬いた。

まるで次の干渉が始まるのを予告するように。


レオンは剣を握り直し、歩き出した。


「行くぞ、B.Z.E.。

 ここから先は……逃げても追いかけてくる相手だ。」


B.Z.E.は静かに頷き、隣に並んだ。


二人の足音は、夜の森へ消えていった。

その奥で、世界の“外側”がわずかに揺れた。

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