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ギルドが下した“公式評価”――もう、言い逃れはできない

王都・冒険者ギルド本部。


普段は落ち着いているはずの上階フロアが、

この日は異様な空気に包まれていた。


「……確定か?」


ギルドマスターが、

手元の報告書を睨みつける。


「はい。

 複数の目撃証言、討伐記録、魔力残滓――

 すべて一致しています」


補佐官が、淡々と答えた。


「辺境の森で活動している

 “正体不明の高位冒険者”――

 その正体は」


一瞬の間。


「元・貴殿の管轄パーティ所属、

 レオン単独行動によるものです」


空気が、凍った。


「……あの、レオン?」


ギルドマスターは、

思わず聞き返した。


「最弱スキル《収納》持ち。

 戦力外として追放した――

 あの?」


「はい」


補佐官は、書類をめくる。


「追放後、

 ソロでの討伐成功率は九割超。

 討伐対象の危険度は、

 元パーティ時代よりも“明らかに上”です」


「馬鹿な……」


誰かが、呟いた。


同時刻。


ギルド一階・掲示板前。


人だかりができていた。


「おい……

 この評価更新、見たか?」


「辺境の新星――

 暫定ランク:A相当……?」


「ソロで?

 冗談だろ……」


ざわめきの中心に、

一枚の張り紙が追加される。


《公式通知》


辺境地域における

特定冒険者の功績を鑑み、

個人評価を更新する。


冒険者名:レオン

暫定評価:Aランク相当

注記:単独行動・高成功率


その名前を見た瞬間。


元パーティの面々は、

言葉を失った。


「……レオン?」


「そんな……

 同姓同名だろ……?」


だが、

追記が容赦なく突き刺す。


※なお、

当該冒険者は

過去に“戦力外”として

特定パーティより追放された記録あり。


「……っ!!」


ガルドの顔が、

真っ青になる。


周囲の視線が、

一斉に集まった。


疑念。

嘲笑。

そして――理解。


(ああ……)


誰もが、悟った。


“間違っていたのは、どちらか”を。


「ち、違う……!」


誰かが、声を荒げる。


「あいつは……

 運が良かっただけだ!」


だが――


受付嬢が、

静かに口を開いた。


「討伐ログ、確認しますね」


端末を操作し、

淡々と告げる。


「追放後、

 あなた方のパーティ評価は――

 連続で下降しています」


「……!」


「連携不足。

 判断遅延。

 危険回避率の低下」


一項目ずつ、

事実が突きつけられる。


その場にいた者の中で、

最も動揺していたのは――


ミリアだった。


「……そんな……」


彼女は、

張り紙を見つめたまま、

立ち尽くす。


(私が……

 切り捨てた人間が……)


(ギルド公認で、

 “正しかった”……?)


上階。


ギルドマスターは、

重く息を吐いた。


「……認めるしかないな」


彼は、静かに言った。


「我々は、

 冒険者を“評価”で切り捨てた」


「そして――

 評価を誤った」


その言葉は、

公式な敗北宣言だった。


数日後。


辺境の街。


レオンは、

静かに依頼書を眺めていた。


「Aランク相当、か……」


実感は、ない。


ただ――


周囲の視線が、

以前とは明らかに違う。


尊敬。

警戒。

期待。


そのすべてが、

《収納》の奥で、

静かに“馴染んでいく”。


《外部評価:確定

 取得効率:安定》


レオンは、

小さく息を吐いた。


(……評価されると、

 確かに楽だ)


依頼は集まる。

報酬も上がる。

誰も、見下さない。


だが――


彼は、ふと思う。


(もし、

 また評価が下がったら?)


その答えは、

まだ出ない。


ただ一つ、確かなことがある。


世界は、

 ようやく“正直”になった。


だが、

それを信じきっていいかどうかは――

まだ、分からない。


追放された最弱は、

公式に“正しかった”と証明された。


そして同時に。


この世界の評価制度そのものが、

静かに――

レオンに試され始めていた。

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