因果の守護者、覚醒 ― 世界が裂ける音
監視者の白い輪郭が揺らぎ、
世界がひとつ大きく脈打った。
因果そのものが人の形を取る姿は、
いまやもう“観察”ではなく、“介入”へと変わっていた。
「――消去を開始する。」
その声が響いた瞬間、
レオンの足元で大地が割れ、
過去・現在・未来がひとつの層に重なり合う。
影が震え、レオンの背にすがるように寄る。
――“来る……あれは、因果の守護者の“本性”だ……”
世界の空がざわめいた。
木々は影を失い、光は逆流し、
空間の距離という概念すら崩れ始める。
「……くそ、ここまでやるのか。」
レオンは剣を構えたが、
その刃先でさえ “未来に存在した瞬間” と “過去の残像” を行き来していた。
監視者は、静かに三歩進む――
ように見えた。
しかし三歩目だけが、
時間の外側からレオンの背後へ現れる。
「なっ――!」
レオンは反射的に剣を振り抜いた。
雷光が空間を裂き、守護者の輪郭を掠める。
だが、手ごたえはない。
「……因果は、“記述”された順番に縛られない。」
守護者の声は淡々としていた。
雷神の鎧さえも、その一言に震える。
影が震えながら囁く。
――“あいつは……未来の可能性を先に実行し、
その結果だけを“今”に降ろしてくる……!”
「結果先行……因果の逆流……!」
そう理解するより早く、
守護者の手がレオンの胸元に伸びた。
触れていないのに、
レオンの胸に“つけられたはずの傷の痛み”だけが走る。
「ぐ……っ!」
守護者は静かに言う。
「これは“結果”。
未来で刻まれた傷を、今に反映しただけ。」
レオンは膝をつく。
雷が散り、視界が揺れた。
影が叫ぶ。
――“やめろ……!
レオンに“結果”だけ押しつけるな……!”
守護者の視線が影に向く。
「理由なき存在。
お前の“未来の結果”も、すでに観測済みだ。」
影の輪郭が大きく震えた。
形が壊れかける。
――“いやだ……!
俺はまだ……存在の理由を……!”
レオンは必死に立ち上がり、
影の前に割って入った。
「……影は、俺が守る。」
「理由の共有は無意味。
因果の外にある存在は、排除されるべき。」
監視者の腕が上がる。
世界全体が静止し――
次の瞬間、
因果の守護者の背後が裂けた。
まるで世界そのものが、
守護者の力の流れに耐えられず剥がれたようだった。
「……始まったか。」
レオンは息を呑む。
監視者の“覚醒”はまだ序章に過ぎない。
裂け目の奥から、
無数の白い線――因果の糸が溢れ出し、
世界のあらゆる存在を結びつけ始めていた。
影が震えながら告げる。
――“あれが……因果の監視者の“第二段階”……
本当の戦いが……ここから始まる……”
レオンは剣を構え直した。
胸の痛みはまだ消えていない。
だが、その痛みが、戦う理由になった。
「理由なき存在を排除するために来たんだろ……?
なら――その理由、俺たちが塗り替えてやる!」
雷光が再び剣に宿る。
因果の守護者が、静かに言った。
「お前たちが選ぶ理由を――確認する。」
世界が裂け、
時間が反転し、
因果の流れが渦巻く。
レオンと影は、ついに“因果の本戦”へ足を踏み入れた。




