創造主創世編!全てのアイデアとインスピレーションを支配する者 ~創作の根源を収納せよ~
レオンが光の道を進むにつれ、空気は温かいのか冷たいのか判別できない揺らぎを帯びていた。足元の大地は柔らかく、触れれば波紋が広がり、過去の感情が反響するように震えた。道の先には、赤と青の光が絡み合う空間が広がり、触れ合うたびに弾けて音を立てる。その音は心臓の鼓動にも似ていた。
エリナが姿を現し、レオンの隣に並んだ。彼女の瞳にも、この層特有の不確かな光が揺れている。
「ここは……好きと嫌い、愛と憎しみ。全部が混じってるみたい。」
レオンはうなずいた。周囲には、誰かに向けられた感情が粒子となって漂っている。憧れ、嫉妬、優しさ、怒り──そのすべてが区別なく浮かんでいた。
「この層が“愛憎”なら、俺たちが目をそらしてきたものが全部押し寄せてくる。」
道の奥で、影が立ち上がった。レオンと同じ姿をしているが、その表情はどこか歪んでいる。瞳だけが深い闇の色をしていた。
「お前は強くなった。そのはずなのに、まだ愛されたいと願っている。憎まれることを恐れている。その弱さから逃げ続けてきた。」
レオンは影を睨みつけた。
「俺はそんなものを頼りにしていない。」
「嘘だ。」
影の声が重く響き、赤い粒子が激しく揺れた。
「愛されたかった。捨てられたくなかった。
その感情を押し殺し、最強という殻に逃げ込んだだけだ。」
エリナがレオンの腕を掴む。
「レオン、聞いちゃだめ。この層は心を揺らすわ!」
しかしレオンは影を見据えたままだった。
「俺の弱さを暴いて何になる?」
影は静かに答える。
「揺れるかどうかは、お前自身の選択だ。」
影が近づくにつれ、レオンの胸が苦しくなった。
愛された記憶、見捨てられた記憶、憧れ、嫉妬、嫌悪、優しさ。
過去に向けられたすべての感情が一気に押し寄せ、呼吸が乱れる。
エリナが叫ぶ。
「レオン! あなたは誰かの感情で動く人じゃない!
あなたは、あなた自身で歩いてきた!」
その言葉に、レオンは胸の奥に宿った光を感じた。
あの層で得た“自由意思”の鼓動だ。
影のレオンが剣を構える。
「選べ。
愛されたいか。
憎まれたくないか。
それとも──」
レオンはゆっくりと顔を上げた。
「どっちでもいい。
俺は“俺が選んだ道”を進む。」
その瞬間、胸の光が強く輝き、赤と青の粒子が一斉に弾けた。
影が驚きの声を漏らす。
「……感情を否定していない……?」
レオンは一歩踏み出した。
「俺は愛されたかった。それは事実だ。
憎まれたくなかった。それも事実だ。
でも──その感情に振り回されなくても、俺は進める。」
影の姿に亀裂が入り、崩れ始めた。
「感情を抱えたまま歩く……そんな器用なことを……」
「器用じゃなくていい。
これは俺の一部だ。だから、そのまま進む。」
影は光の粒となり消え去り、空間には静けさが戻った。
エリナがレオンの肩に触れる。
「あなた……ようやく自分の心を受け入れたのね。」
レオンは前を見つめた。
「次に進む。」
光の道が開け、彼は迷うことなく歩き出した。




