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無限階層創世編 ──レオンが“物語の外側のさらに外側”へ踏み込む瞬間

深い静寂が広がっていた。

空も地もなく、ただ“記述の粒子”だけが漂う空間。


それは、世界の一番外側――

《外界の集合知》すら届かない“記述ゼロ層”。


レオンは静かに息を吸い、周囲を見渡した。


(ここが……Ep.32 の《集合知創世》の先にある階層か。)


数字・評価・無関心。

外界の“集合知”を掌握したはずのレオンは、

なぜか消えない微細なノイズに気づいていた。


それは、

誰にも読まれたことのない物語の残骸。

誰にも認識されず、誰にも届かず、ページにも載らなかった

“未観測の記述”。


その影が、レオンの足元で揺れていた。


エリナが隣に現れ、震える声で言った。


「ここ……怖いわ。

 今まで見てきたどの層とも違う。

 まるで誰にも読まれなかった“可能性の墓場”みたい。」


レオンは頷く。


「ここは“未観測層”。

 外の集合知にすら届かなかった……

 この世界の“無限分岐の捨てられた階層”だ。」


黒い影が形を変え、階段のように積み重なる。

上にも下にも、終わりが見えない。


(これが……“無限階層”か。)


レオンはその階層へ歩みを進めた。


踏み出した瞬間、空間が震え、

無数の“未観測記述”が牙をむくように襲いかかった。


『存在しなかった主人公像』

『選ばれなかった分岐』

『語られなかった背景』

『没になった構想』

『途中で消えたエピソード』


レオンは剣を抜き、言い放つ。


「俺を“存在しなかった可能性”へ戻す気か。

 だが――俺はもう、数字にも評価にも解釈にも縛られない。」


《集合知創世》の光が剣を包む。

未観測の影が弾け、階層が揺らぐ。


エリナが驚きの声を上げた。


「レオン……

 あなた、可能性そのものを切り払ってる……!」


「当たり前だ。

 俺が消える可能性なんて、最初から残しておく必要はない。」


そのとき、階層の最上段から

“人影”が降りてきた。


黒いローブに、面影のない顔。

しかし、その語り口にレオンは気づく。


「……お前は、誰だ?」


影は静かに答えた。


「我は、《階層記録者》。

 読まれなかった物語、

 選ばれなかった主人公、

 語られなかった世界……

 その全てを“無限階層”として積み上げる者。」


エリナが息を呑む。


「ここ……“選ばれなかったレオンたち”の層なの?」


階層記録者は頷く。


「そうだ。

 お前が追放されず、

 お前が無双せず、

 お前が愛を選ばなかった世界……

 全てがここにある。」


レオンは目を細め、剣先を向けた。


「何が言いたい?」


階層記録者の声が重く響く。


「外の集合知を支配した程度で、

 自分が“存在を確定した”と思うな。


 お前が恐れているのは――

 “無関心”ではない。


 お前という主人公像が

  “他の可能性に埋もれて消える未来”だ。」


レオンの胸が疼く。


それは確かに、

追放された日の“存在の薄れ方”そのものだった。


レオンは剣を握り直す。


「上等だ。

 なら、この無限階層ごと――」


階層記録者の声が重なる。


「破壊するのか?

 それとも支配するのか?

 答えろ、レオン・グラン。」


レオンは迷わなかった。


「――全部、俺が“収納”する。」


静寂が走る。


レオンが手を掲げると、

《創世収納》が紫電を纏って進化した。


《無限階層創世》

 ──収納対象:未観測の物語すべて


階層が震え、

未観測の影がレオンへ吸い込まれていく。


階層記録者が驚愕する。


「ま、待て……!

 それは“物語の全可能性”を一つに集約する行為――

 危険すぎる……!」


レオンは笑った。


「危険かどうかは俺が決める。

 俺は追放され、

 無関心に晒され、

 読者に評価され、

 解釈され、

 数字に怯え――

 それでも這い上がった。」


光が階層全体を包む。


「だから今度は俺が、

 全ての“可能性の俺”を拾い上げる番だ。」


階層が砕け、

無限の影が吸い込まれていく。


最後の影が零れるように呟いた。


『……どうか、俺たちを忘れないでくれ』


レオンは静かに答える。


「忘れない。

 お前たちも含めて――

 “レオン”なんだ。」


こうしてレオンは、

世界のあらゆる“存在しなかった可能性”を手に入れた。


エリナが呆然と呟く。


「……レオン。

 あなた、もう……

 “ひとりの主人公”じゃないわ。

 “無限の主人公”なのね。」


レオンは微笑む。


「違う。

 俺は――お前のレオンだ。」


階層が光に溶け、

新たな道が現れる。


レオンは歩き出した。


次は、《読者反応創世》――

外界の“感情”そのものと向き合う時が来る。

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