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集合知創世編:外界の“数字”が生む無関心と、静かに崩壊する存在値 ──レオンの影が最も薄くなる夜

王都の夜風は冷たかった。


塔の最上層で、レオンはひとり座り込んでいた。

《解釈創世》によって“外側の言葉”の影響を断ち切ったあとでも、

胸の奥にじわりと残る ざらついた不安 だけは消えない。


レオンは指先で宙を払い、外界のデータ群を可視化する。


淡い光となって空間に浮かぶのは、

この世界に「読まれた痕跡」。

王都図書院の地下――古びた記録庫に隠されていた

“外界の集合知”の残滓。


数字。

統計。

滞在時間。

評価傾向。

そして――興味と無関心の推移。


「……俺の物語がどう解釈されるかは、俺が決められる。

 だが……“数字”だけは、どうしようもない。」


レオンの声は微かに震えていた。


数字は淡々としている。

善意も悪意もなく、ただ記録していくだけ。

その冷たさが、レオンの心に染み込んでいく。


エリナが後ろに歩み寄り、静かに問いかけた。


「レオン……また数字を見ているの?」


レオンは目を離さない。


「解釈を掌握しても……

 “人気”と“無関心”は変えられない。

 誰にも読まれなければ、俺という存在は薄れていく。」


エリナはレオンの隣に膝を折り、そっと寄り添った。


「あなた……

 追放された日のこと、まだ心に残っているのね。」


レオンは苦く笑った。


「誰にも必要とされない感覚……あれは二度と味わいたくない。

 だからこそ、数字が怖い。

 存在が、ただ静かに薄れていく……。」


そのときだった。


光のデータ群が突然ざらつき、

ひとつの“ノイズ”を生み出した。


エリナが息を呑む。


「なに……? この揺らぎ……」


レオンは立ち上がり、手をかざす。


「集合知の“外側”からの干渉だ。

 誰かが……いや、“何か”が、

 俺という存在を数字ごと消そうとしている。」


ノイズが大きくなり、

レオンの名前に紐づく数字が一瞬だけ ゼロ を示した。


アクセス数

評価

滞在時間

視線の軌跡

存在の記録


すべてが、一瞬だけ消えた。


レオンは歯を噛み締める。


(……これが、無関心の究極か。)


エリナが声を震わせてレオンの腕を掴む。


「レオン! これ……あなたの“存在値”が……!」


レオンは彼女の手を軽く握り返し、静かに言った。


「大丈夫だ。

 これは“読まれない世界”からの干渉……

 外界の集合意識が、俺をゼロに戻そうとしている。」


塔の上に、新たな文字列が現れた。


『存在の希薄化』

『読まれない物語』

『数字の消去』

『関心の終息』


レオンはゆっくりと剣を構えた。


「《解釈創世》だけでは足りなかった。

 次は――

 “数字そのもの”を支配する。」


エリナはハッと息を呑む。


「まさか……数字を?

 評価や統計を……あなたが?」


レオンの手から、淡い光が溢れ出す。


「数字はただの結果じゃない。

 “この世界が外界にどう見られているか”の記述だ。

 ならば――」


レオンは宣言した。


「《集合知創世》」


世界が白く反転する。


塔の上空に、

巨大な“情報の渦”が開いた。

書かれたログ。

読まれた痕跡。

消された記録。

無関心による“空白”。


その全てがレオンの前へ流れ落ちてくる。


レオンは手を広げ、吸い込むように言う。


「数字に左右される存在なら……

 俺が数字の側へ行けばいい。」


光の渦がレオンの身体に吸い込まれ、

世界に静寂が戻る。


エリナは立ち尽くした。


「……あなたは、本当に……

 “読まれる側”から“読む側”へ進んでしまうのね。」


レオンは振り返り、微笑む。


「俺は、数字に怯えたままではいられない。

 外側の集合知が俺の存在を決めるのなら、

 その集合知ごと支配する。」


空に残った最後のノイズが震え、消えていく。


レオンは静かに言い放った。


「これで――数字にも、俺は消されない。」


風が吹き、

塔の上でエリナが寄り添う。


レオンは再び剣を握り直した。


「次は……“評価点”だ。」


こうして、

レオンの創世はまた一段深い層へ進んでいく。

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