評価を使えば助かる。使わなければ、もっと失う。
王都近郊。
レオンは、
久しぶりに“中央”に呼び戻されていた。
理由は、
一つだけ。
《強制依頼》
対象:都市外縁部・大規模魔獣災害
危険度:S
指名:レオン
備考:評価連動案件
「……評価連動、か」
受付官は、
事務的に告げる。
「この依頼は、
評価値を基準に
戦力配分が行われます」
「あなたの現在評価では――」
一瞬、
言葉を選ぶ。
「配置上、
主力にはなれません」
(来たな)
レオンは、
静かに息を吐いた。
作戦会議。
参加者は、
王都有力パーティ、
騎士団、
高位冒険者。
そして――
レオン。
だが。
席の位置が、
違う。
端。
「……彼が?」
誰かが、
小声で囁く。
「評価、
ほとんどないぞ」
「なぜ呼ばれた?」
会議が始まる。
評価上位者が、
指示を出す。
だが――
配置が、甘い。
魔獣の動線を、
読めていない。
(……このままだと)
(街が壊れる)
レオンは、
一度だけ手を挙げた。
「発言を」
視線が集まる。
不満。
苛立ち。
疑念。
「今の布陣だと、
第二波を止められない」
「中心を下げるべきだ」
沈黙。
数秒。
そして。
「却下だ」
評価上位者が、
即答する。
「君の評価では、
判断材料として不足している」
(……そうか)
出撃。
予測通り、
第二波が来る。
突破される。
市街地に、
被害。
悲鳴。
「……っ!」
レオンは、
歯を食いしばる。
《選択》
《評価を一時的に解放すれば、
指揮権限が付与されます》
《ただし――
以後、評価連動が復活します》
《収納》が、
初めて“交渉”してきた。
(使えば、
救える)
(でも――)
瓦礫の下で、
泣き叫ぶ声。
迷う時間は、
ない。
「……解放しろ」
世界が、
一段階、色を変える。
《評価:一時復帰》
《権限:上書き》
「全隊、聞け!」
レオンの声が、
戦場に響く。
誰も、
逆らえない。
配置転換。
退路確保。
囮運用。
評価補正が、
一気に戻る。
判断が、
冴える。
魔獣殲滅。
被害、最小。
静寂。
戦後。
人々は、
助かった。
だが。
レオンの胸は、
重い。
《評価更新》
大規模災害阻止
功績:特大
評価:急上昇
歓声。
称賛。
「英雄だ!」
「やはり彼だった!」
だが。
レオンは、
何も言わない。
夜。
一人、
瓦礫の街を歩く。
《収納》が、
静かに表示する。
《警告》
《評価依存度:再上昇》
「……分かってる」
小さく呟く。
「でも――」
(あの場で、
使わない選択は、
できなかった)
遠く。
管理者側。
白髪の男が、
深く息を吐く。
「……彼は、
“評価を拒絶した英雄”ではない」
「評価を“道具として使う人間”だ」
「危険ですね」
誰かが言う。
「ええ」
男は、
静かに笑った。
「だから――
面白い」
レオンは、
夜空を見上げる。
評価を使った。
助けた。
救った。
それは、
間違いじゃない。
だが。
「評価を使わなければ、
助からなかった命」
その事実が、
胸に残る。
追放された最弱は、
この日。
“きれいな理想”を、
一度、汚した。
だが――
それは敗北ではない。
「使うか、使われるか」を、
自分で選んだだけだ。
そしてここから。
物語は、
次の段階へ入る。




