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レオンを失った結果、世界は“正直”になった

「……おかしい」


パーティリーダーのガルドは、

地面に転がる仲間を見下ろしながら、唸った。


「何がだよ……」


回復役の男が、血を吐くように答える。


「いつもなら、こんな魔獣――

 余裕で倒せてたはずだろ……!」


相手は、ただの中級魔獣。

昨日までなら、問題にもならない。


だが今は――


「くそっ……!」


前衛が弾き飛ばされ、

後衛の魔法は狙いが定まらない。


連携が、噛み合っていなかった。


「落ち着け!

 いつも通りやれ!」


ガルドが叫ぶ。


だが、返ってくるのは焦りだけ。


(……何だ、この違和感)


攻撃が遅い。

判断が鈍い。

立ち位置が、微妙にズレている。


ほんの少し。

だが致命的な“少し”。


「……レオンがいないからだ」


誰かが、ぽつりと言った。


一瞬、空気が凍る。


「は?」


「いや……

 あいつ、いつも後ろで指示してただろ。

 魔獣の動きとか……

 逃げ道とか……」


「……気のせいだろ。

 あいつは雑用係だ」


そう言い切ったのは、

昨日、真っ先にレオンを嘲笑った男だった。


だが――


誰も、すぐには否定できなかった。


戦闘は、辛うじて勝利で終わった。


だが、全員がボロボロだ。


「……こんなはずじゃなかった」


ガルドは、地面に拳を叩きつける。


「俺たちは強い。

 あいつがいなくなったくらいで――」


言い切ろうとして、

言葉が詰まった。


昨日まで、

“当たり前”に勝てていた理由が、

説明できない。


ギルドに戻ると、

受付嬢の反応が、微妙に変わっていた。


「あ……えっと……

 本日の討伐報告ですね?」


視線が、

どこか疑うようになっている。


「達成率、いつもより低いですね」


その一言が、胸に刺さる。


「たまたまだ」


ガルドが言うと、

受付嬢は曖昧に頷いた。


「……そう、ですね」


その態度が、

何よりも不快だった。


一方、その頃。


王都から少し離れた辺境の宿。


レオンは、

静かに食事を取っていた。


周囲の冒険者たちが、

ひそひそと囁いている。


「聞いたか?

 ソロでグレイウルフを一撃だってよ」


「ありえねぇ……

 どこの化け物だよ」


視線が、集まる。


その瞬間。


《収納》が、微かに反応した。


《外部評価:上昇

 取得補正:安定》


レオンは、箸を止めた。


(……また、か)


自分が何かをしたわけじゃない。

ただ、噂が広がっているだけ。


それだけで、

力が“馴染んでいく”感覚がある。


同じ夜。


元パーティの一室では、

険悪な空気が漂っていた。


「なあ……

 レオン、呼び戻さないか?」


誰かが、耐えきれずに言った。


「ふざけるな!」


即座に、別の男が怒鳴る。


「今さら!

 あんな最弱を――」


「でも!

 あいつがいなくなってから、

 明らかにおかしいだろ!」


沈黙。


誰も、完全には否定できない。


ガルドは、歯を食いしばった。


(……認めたくない)


もし認めたら――

昨日の追放が、

完全な間違いだったと証明される。


「……必要ない」


彼は、そう結論づけた。


「俺たちは、

 “あいつがいなくても強い”」


だがその言葉は、

自分に言い聞かせているだけだった。


翌朝。


掲示板に、新しい噂が貼られる。


《辺境の森に、

 正体不明の強力冒険者出現》


それを見た瞬間、

元パーティの誰もが、息を呑んだ。


名前は、書かれていない。


だが――


全員が、誰のことか分かっていた。


レオンは、まだ何も知らない。


自分を切り捨てた者たちが、

静かに、

確実に――転げ落ち始めていることを。


ざまぁは、

もう始まっている。

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