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世界律創世 ――物語の檻を壊し、己を定義する者

静寂――。 因果の奔流を突き抜け、レオンが辿り着いたのは「評価システム」の心臓部だった。 そこは神界でも魔界でもない。無数の羊皮紙と、輝く数字の羅列が空を埋め尽くし、全人類の運命が「記述」として流動する、巨大な概念の記録庫。


(ここが……オレを『無能』と定義し、世界から追放した力の根源か)


空中に浮かぶ文字を追う。そこにはレオンの人生すらも、誰かの娯楽のための「脚本」として冷徹に刻まれていた。 【個体名レオン:追放により物語の劇性を140%向上。絶望による覚醒を期待値通りに推測】 【エリナ:献身的なヒロインとしての役割を固定。再会によるカタルシスを最大化】 【勇者パーティ:レオン不在による機能不全を『成長の試練』として上書き処理】


「……ふざけるな」


レオンの拳が、骨が鳴るほどに震える。 自分たちの流した血も、再会の涙も、あの夜に噛み締めた絶望さえも。すべては「世界という物語の評価」を高めるための、計算済みの演出に過ぎなかったのか。 これまで手に入れてきた強ささえ、システムが「追放された主人公の逆転劇」を盛り上げるために与えた、安っぽい報酬だったのではないかという疑念が脳を焼く。


そのとき、空間の中央に光が凝縮し、巨大な「天秤」を抱えた人の姿が浮かび上がった。それは世界の管理者――「律」を司る意思の断片。


「辿り着いたか。評価を乱し、ジャンルを歪める異物よ」


その声には感情がなく、ただ圧倒的な「法」としての重圧があった。


「お前はシステムの予測を越えすぎた。本来、お前は第19話で評価の低下に絶望し、野垂れ死ぬべき『使い捨ての端役』だったのだ。だがお前は評価を捨て、自律成長というあり得ないバグを引き起こした。それは世界の整合性を破壊する大罪だ」


「バグだと? オレは、自分の足で歩き、自分の目で見て、救いたいものを救っただけだ!」


「それがバグなのだ。この世界は人々の『期待』という評価によってのみ形作られる。勇者が勝つのも、悪役が負けるのも、観測者がそれを望むからだ。お前が個人の意思で安息を求めることは、この世界の活劇という『ジャンル』そのものを否定することに等しい」


管理者の手が動き、レオンの周囲に無数の「鎖」が現れる。それは【高評価】【最強】【伝説】と刻まれた、美しくも重い「評価の鎖」だった。


「選べ、レオン。既存の評価体系に従い、我々の用意した『最強の英雄』という席に座るか。そうすればお前の望む安息も、舞台装置の一部として保障しよう。……それとも、この鎖を拒み、誰にも理解されない『虚無』へと消えるか」


レオンは、自分を縛ろうとする【最強】の鎖をじっと見つめた。 これを受け入れれば、もう誰に蔑まれることもない。世界が用意した「正解のハッピーエンド」が約束される。


だが、それは「レオン・グラン」の人生と言えるのか?


「……断る」


レオンは静かに、しかし明確に告げた。 「誰かに用意された最強なんて、ゴミ溜めの無能と変わらない。オレが欲しいのは、他人の評価で決まる安息じゃない。オレ自身の手で、守りたいものを守り抜いた先にある――沈黙だ」


雷神の鎧が、これまでにないほど激しく黄金の光を放つ。 《収納》が、外側から与えられた力ではなく、レオンの「魂の熱量」をエネルギーとして変換し始めた。


「オレは新しい律を創る。評価されるから強いんじゃない。オレがオレであるから、強いんだ!」


空間が激しく鳴動し、管理者の天秤が粉々に砕け散る。 レオンの背後に、既存の魔法体系にも、神の法にも属さない「第三の輝き」が溢れ出した。


『創世収納、第二段階へ完全移行。新規律:【安息の秩序(自律型評価系)】を世界に記述します』


身体を駆け巡る感覚が変わる。借り物のチートではない。レオン・グランという一人の男の魂が、世界の法則そのものを上書きした瞬間だった。


「……信じられぬ。物語の枠組みそのものを、一人の『役者』が書き換えるとは」


管理者の姿が光の中に溶けていく。レオンは砕けた鎖の破片を踏み越え、前を向いた。 「行くぞ。ここからは、オレの物語だ」

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