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誰も評価していないのに、なぜか“勝っている”

辺境の街・リュスト。


朝のギルドは、

いつもより騒がしかった。


「……聞いたか?」


「街道巡回の件だろ?」


「Cランク依頼だぞ?

 被害ゼロって……おかしくないか?」


ざわめきの中心に、

レオンはいない。


受付嬢は、

端末を見つめて眉をひそめていた。


「……評価、動いてない」


記録は、確かにある。


討伐完了


被害ゼロ


住民感謝


だが――

評価値は、完全に無反応。


(……普通なら、

 微増くらいはあるのに)


「なあ」


後ろから、

別の受付嬢が声をかける。


「最近のレオンさん、

 ちょっと変じゃない?」


「変?」


「評価、

 ほとんどないのに……

 失敗してない」


同じ頃。


街道沿い。


二人組の冒険者が、

魔獣の死体を前に立ち尽くしていた。


「……これ、

 誰が倒した?」


「痕跡からすると……

 一人だ」


「でも……

 派手な戦闘跡、ないぞ」


不自然なほど、

綺麗な現場。


宿。


レオンは、

静かに装備を整えていた。


最近、

身体の使い方が変わった。


《収納》の補助に頼らず、

無駄な動きを削っている。


(……遅いけど)


(確実だ)


外に出ると、

視線を感じる。


好意でも、

侮蔑でもない。


困惑。


「……なあ」


顔見知りの冒険者が、

遠慮がちに声をかける。


「最近……

 依頼、楽しいか?」


唐突な質問。


レオンは、

少し考えて答える。


「……前よりは」


「評価、

 上がってないだろ?」


「そうだな」


「なのに……

 なんで続けてる?」


レオンは、

すぐには答えなかった。


「……勝ててるから」


その言葉に、

冒険者は黙り込む。


「……それ、

 おかしいぞ」


ぽつりと、

そう言った。


「普通はさ……

 評価がないと、

 だんだん負け始める」


レオンは、

小さく笑った。


「俺も、

 そう思ってた」


その夜。


街外れ。


小規模な魔獣群が、

発生する。


対応に出たのは、

複数パーティ。


だが――

連携が乱れ、

被害が出始める。


「……っ、

 下がれ!」


聞き覚えのある声。


レオンだった。


彼は、

指示を出す。


評価は、ない。

権限も、ない。


それでも――

動きが、噛み合う。


無駄のない配置。

引き際の判断。

倒す順番。


派手さは、ない。


だが結果は――

被害最小での制圧。


《評価更新》


関与者:補助

評価対象外

数値変動:なし


戦闘後。


誰かが、

ぽつりと言う。


「……あれ?」


「今の戦い……

 誰が主導した?」


沈黙。


レオンは、

何も言わずに立ち去る。


評価は、

増えない。


だが――

背後の視線は、

確実に変わっていた。


上階。


管理者側の観測室。


モニターが、

不規則に揺れる。


《外部評価:低》


《結果整合率:異常》


「……説明がつかない」


誰かが、

低く言う。


「評価がないのに、

 成功率が落ちていない」


白髪の男が、

静かに言った。


「……それが問題だ」


「評価は、

 世界を安定させるための

 装置だ」


「それを介さずに

 成功されると――」


「“物語”が、

 予測できなくなる」


その言葉に、

空気が重くなる。


翌朝。


掲示板に、

奇妙な噂が貼られる。


《最近、

名前が出ないのに

なぜか現場が片付いている》


レオンは、

それを横目で見て、

静かに歩き出す。


(……誰も、

 評価してない)


(それでいい)


《収納》が、

微かに表示する。


《取得:

 非観測下行動

 集団最適化(微)》


追放された最弱は、

まだ無名だ。


称賛も、

数字も、ない。


だが――


「評価されない強さ」が、

 周囲にとって

 いちばん不気味になり始めていた。


それはやがて、

世界にとって――

無視できない異物になる。

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