表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/19

外伝編突入!物語の外側へ ~創世神レオン、新たなる次元~

村を離れたころ、空は薄い雲に覆われていた。

朝の光は弱く、森の影が地面に長く伸びる。

足音だけが静かに響き、その合間に胸の奥のざわめきが痛むように揺れていた。


――あれは、本当に“未来”なのか。


炎に包まれる村。

空へと伸びる裂け目。

そして、意思を失った魔獣の異様な動き。


思い出すたび、胸が重くなる。

だが、その奥に別の感情があった。

不安でも怒りでもない、もっと曖昧で、言葉にしがたいもの――。


「見過ごすわけにはいかない。」


声にして初めて、自分の中に芽生えていたものが“責任”に近いと気付いた。

追放されたときには抱くことさえなかった感情だった。


雷神の鎧が、ときおりかすかに震える。

その脈動は、急かすようでも、迷うなと背を押すようでもあった。


森を抜けると、小高い丘に出た。

そこで数人の冒険者たちが荷を広げて休んでいる。

レオンが通りかかると、彼らはざわつき、目を向けてきた。


「なぁ、見たか? 森の魔獣……なんか変なんだよ。」

一人が言う。


「焦点が合ってねぇ。攻撃しても逃げねぇ。」

「魂を抜かれたみたいで……あれは生き物じゃなかった。」


魂を抜かれた。

その言葉が刺のように胸に触れた。


「……他の場所でもか?」

レオンは立ち止まり、低い声で聞いた。


冒険者たちは神妙にうなずく。


「北の集落でも、動物がいきなり飛び出してきたらしい。

 目が死んでた。

 村に入る前に、ぱたりと倒れたって。」


まるで糸が切れたように――

先ほど井戸で見た魔獣と同じだった。


レオンは深く息を吐いた。


「広がっているんだな……歪みが。」


思わず出たその言葉に、冒険者たちは顔を見合わせた。


「何かわかるのか?」

おそるおそる問いかけられる。


レオンはかすかに首を振った。


「まだだ。ただ……確かめないといけない。」


その声音は落ち着いていたが、自分の胸の内では別の感情が渦巻いていた。

恐怖ではない。

だが、ただ前に進めばいいというほど単純でもない。

“もし映像が現実化したら”という重い予感が、影のようについてくる。


丘を越え、街道へ出るころだった。

ふいに風が止まり、周囲が静まり返った。


「……まただ。」


昨日と同じ気配。

空気がひやりと冷え、耳鳴りに似た音が遠くで鳴る。


胸の奥で、鎧の鼓動が高鳴る。

雷神の力が“警告”を発しているのだと、もう理解できた。


丘の向こうで、小さな光が揺れた。

木漏れ日のように柔らかい光――だが、その奥に微かな脈動がある。

まるで生き物のようだ。


「また……お前か。」


光はゆっくりと漂い、レオンの胸元の位置で止まった。

輪郭はぼやけ、触れれば消えてしまいそうな儚さだ。


「見せたいものがあるのか。」


光が微かに震え、景色が水面のように揺れた。

次の瞬間、視界が白く染まる。


炎に呑まれる家々。

倒れ伏す人々。

空を裂く巨大な影。

そしてその中心に、輪郭の曖昧な“人影”が立っていた。


顔はない。

代わりに、無数の光の線が形を作り、レオンを射抜くように向けてくる。


「……誰だ。」


問いかけると、景色が一瞬で消えた。

光の球体はすでに薄れ、風が戻り、鳥の声さえ聞こえ始めていた。


レオンは息を整え、額に手を当てた。

胸の中に残ったのは、恐怖ではなく――重い疲労だった。


「……俺に、何をさせたい。」


答えは来ない。

その代わりに、鎧が脈動を強めた。

敵に反応する時の鼓動。


つまり、“あの影”が何であれ、関わってくる存在なのだ。


「行くしかないな。」


レオンは剣を背負い直した。

曇り空の上に、淡い揺らぎがまた走っている。


境界がゆっくり軋み始めている。

誰かが意図的に引っかき回しているのかもしれない。

その中心に、あの影がいるのかもしれない。


「この歪みを追う。

 たとえどこへ繋がっていても――俺が確かめる。」


強い言葉を吐いたが、その裏ではまだわずかな戸惑いが渦巻いていた。

世界が変わり始め、力が膨れ上がるほどに、昔の“普通の自分”との距離が広がっていくように感じる。


それでも足は止まらない。

胸の奥で鼓動が鳴り続けている限り。


レオンは歩き出した。

誰もまだ知らない、この一歩が大陸全土を巻き込む“最初の探索”となることを。


曇り空の向こうで、風だけが静かに彼の背を押していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ