全員が正しい判断をしたのに、結果だけが最悪だった
辺境の街・リュスト。
ギルドの空気が、
重かった。
「……この依頼、受ける人います?」
受付嬢の声に、
誰も反応しない。
掲示板に貼られた依頼書。
《緊急依頼》
対象:山間集落の魔獣被害
危険度:B
内容:住民の護衛および避難誘導
「B……だよな?」
「内容、軽くないか?」
「でも……
“既に死者あり”って……」
数字と現実が、
噛み合っていない。
レオンは、
少しだけ迷ってから、依頼書を取った。
(……嫌な予感がする)
《収納》は、
反応しない。
それが、
余計に不安だった。
現地。
小さな集落は、
すでに半壊していた。
家屋が壊れ、
血の跡が残っている。
「遅かった……のか?」
生き残った住民が、
震える声で説明する。
「魔獣は……
一体だけじゃ、なかった……」
魔獣出現。
三体。
どれも、
Bランク相当。
普通なら、
問題ない数。
「下がってください」
レオンは、
迷わず前に出た。
戦闘。
速い。
正確。
一切の無駄がない。
――三十秒。
魔獣は、
すべて倒れた。
《収納》が、
淡々と取得を表示する。
《取得:
戦闘最適化
恐怖耐性》
だが。
胸の奥が、
ざらつく。
「助かった……
本当に、ありがとう……」
住民が、
涙を流して礼を言う。
だが――
全員ではない。
瓦礫の下から、
遺体が見つかる。
子供。
老人。
数名。
「……俺が来るのが
もう少し早ければ」
誰かが、
そう呟いた。
誰も、
否定しなかった。
帰還後。
ギルドは、
依頼成功として処理する。
「被害拡大を防止
魔獣討伐完了
避難誘導成功」
すべて、
事実だ。
だが。
《評価更新》
戦闘評価:最高
社会的貢献:中
総合評価:微増
(……微増?)
レオンは、
端末を見つめる。
(人を救った。
正しいことをした)
(それでも、
これだけか)
その夜。
宿で、
レオンは珍しく酒を飲んでいた。
「……結局さ」
独り言。
「強くても、
全部は救えない」
《収納》が、
静かに反応する。
《未取得:
後悔
罪悪感》
(……取れない、か)
その瞬間。
初めて、
レオンは理解する。
(この力は……
“結果”しか評価しない)
(途中の選択も、
気持ちも……関係ない)
遠く。
管理者側のモニターが、
静かに光る。
《評価変動:想定内》
《対象:
感情的動揺あり》
「……来たな」
白髪の男が、
小さく呟く。
「ここからが――
本番だ」
追放された最弱は、
初めて“報われなさ”を知った。
勝った。
正しかった。
でも――
救われなかった。
そして読者は、
気づき始める。
この物語は、
無双する話じゃない。
“正しさが必ずしも報われない世界で、
それでも選ぶ話だ”と。




