世界の外縁 ――理(ルール)が剥がれ落ちる場所
王都からの「負け役」の強要を撥ね退けたレオンは、辺境のさらに先、地図にない空白地帯へと足を踏み入れていた。
そこでは、不自然な現象が起きていた。 川の水が逆流し、空の色が数秒おきにパッチワークのように入れ替わる。
「……ここが、世界の端か」
《収納》が、かつてない激しさで警鐘を鳴らす。
《警告: この領域は“未定義”です。 外部評価システムが機能しません》
「評価が届かない場所……。なら、ここでならオレは『ただのレオン』でいられるのか?」
だが、現実は残酷だった。評価という支えを失った瞬間、レオンの身体から力が抜け落ちていく。剣を振るう腕は震え、視界は霞む。
《収納》の奥底から、一つの問いが響く。
《問い: 評価なき存在に、価値はあるか?》
レオンは、歪んだ地面を這いながら、かつて自分を捨てた王都の連中や、婚約者の冷たい目を思い出した。 「価値があるから生きるんじゃない……。生きてるから、価値をオレが決めるんだ」
その瞬間、《収納》が漆黒から黄金色へと変質した。
《取得: 自己定義 概念干渉:零域》
レオンは立ち上がる。もはや世界に「強敵」を用意してもらう必要はない。 彼は、崩れかけの世界の外縁を、自らの意志で「収納」し、繋ぎ止め始めた。
修正エピソード11:【評価の呪縛 ――かつて信じた“肯定”の正体】
(※第10話での覚醒中にフラッシュバックする、レオンの過去と真実)
意識が混濁する中、レオンは冒険者になったばかりの頃を思い出していた。
初めて依頼を達成し、受付嬢に「頑張りましたね」と言われたあの日。 ギルドの端末に「評価:F」と表示されただけで、オレは救われた気がした。
「……バカだったな、あの時のオレは」
今なら分かる。 あの時、オレが喜んでいた「評価」は、世界を管理する者たちが、家畜に与える「餌」と同じだったのだ。
《解析中―― 過去ログ:全エピソード 真実の開示》
レオンが《収納》で魔獣を倒すたび、その「死」や「怨念」といったマイナスデータは、世界から消えていたわけではなかった。 すべてレオンのスキルを通じて「管理者」たちの元へ集められ、世界の維持コストとして再利用されていたのだ。
「オレは……世界のゴミ捨て場だったってわけか」
あらすじにある「世界中のあらゆる力を取り込む」という言葉の真意。 それは、世界が排出すべき「毒」をすべて引き受ける代わりに、一時的な「力」を借りるという等価交換。
《収納》が、レオンの記憶を整理していく。
「ざまぁ……か。オレを捨てた王都の連中も、管理者も、オレがこの『毒』を投げ返したら、どんな顔をするんだろうな」
レオンの目が、冷たく冴え渡る。 喜びだったはずの評価は、今や彼にとって、壊すべき「檻」へと変わっていた。




