追放された最弱スキル持ち、世界が俺を間違えた
「――もういい。お前は、ここまでだ」
冒険者ギルドの会議室に、冷たい声が響いた。
レオンは、円卓の中央に立たされたまま、
ゆっくりと顔を上げる。
「最弱スキル《収納》持ち。
戦闘能力は最低、成長性もなし。
パーティにいる意味がない」
ギルドマスターの言葉は、刃物のように正確だった。
「……三年間、雑用も後方支援も全部やってきました」
レオンが言うと、誰かが小さく笑った。
「それが限界ってことだろ?」
「荷物持ちが調子に乗るなよ」
仲間だったはずの男たちは、
最初から“そうなることが決まっていた”かのような顔をしていた。
(ああ……そうか)
レオンは、悟る。
俺は、最初から数に入っていなかった。
「では、次に――婚約の件だ」
前に出てきたのは、
かつて愛した少女、貴族令嬢・ミリアだった。
彼女は一切の迷いもなく、宣言する。
「レオン。あなたとの婚約は、今日この場で破棄します」
会議室が、ざわつく。
「理由は?」
レオンの問いに、ミリアは即答した。
「弱いからです」
それだけだった。
「才能がない。
実績もない。
将来性もない」
一つ一つ、釘を打つように言う。
「私の隣に立つ資格が、あなたにはありません」
その言葉に、胸が軋む。
(……愛してたとか、そういう話じゃないんだな)
価値がないから切られただけ。
それが、この世界の答えだった。
「異議はあるか?」
ギルドマスターの問いに、
誰も口を開かなかった。
レオンの存在は、
この瞬間、完全に“不要”として確定した。
「……分かりました」
レオンは、それだけ言った。
怒鳴る価値すら、もう残されていなかった。
ギルドの裏口から放り出され、
夜の王都に出た瞬間――
《収納》が、震えた。
「……?」
いつものように、荷物を出し入れする感覚とは違う。
奥で、何かが“満たされていく”感覚。
(……何だ、これ)
足元が、ぐらりと揺れる。
いや、違う。
世界のほうが、揺れた。
街の灯りが、一瞬だけ歪み、
音が、半拍遅れて届いた。
「……は?」
《収納》の中に、見たことのない表示が浮かぶ。
《取得中――
評価外資源:未分類》
「評価……外?」
意味が分からない。
だが、本能が告げていた。
これは“おかしい”。
そして――とんでもない。
レオンは、拳を握る。
(最弱?
価値がない?)
胸の奥で、何かが熱を帯びる。
(――ふざけるな)
三年間、支え続けた。
命を張った。
それでも「期待に応えられない」だけで切り捨てられる世界。
なら――
「……もういい」
レオンは、夜空を見上げた。
「この世界が俺を要らないって言うなら」
《収納》が、応えるように鼓動する。
「――俺のほうが、世界を使ってやる」
その瞬間。
《収納》の奥が、底なしに開いた。
魔力、技、概念、
“力と呼ばれるもの”が、世界中から流れ込み始める。
レオンは、まだ知らない。
この能力が――
世界最強への入口であり、
同時に「物語の裏側」へ踏み込む鍵であることを。
だが、今はただ一つ。
追放された最弱は、
二度と“弱者”として終わらない。




