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第9章:背徳の罠

 王宮内での動きは、私の想像以上に速かった。セドリックの協力を得ることで、エレナを追い詰めるための手順は確実に整いつつある。しかし、セドリックがほんの少しでも私の目的に従うかどうか、その真意を図るには時間が足りなかった。今、私はその背後に潜む別の陰謀を暴く必要がある。


 翌日、私は王宮内の重臣たちが集まる会議の場に足を運んだ。エレナが関わることになるこの会議は、私にとって一大事だ。この場で彼女の隠していること、そして彼女がどれだけ王宮の力を利用しているのかを明らかにしなければならない。


 会議室に足を踏み入れると、すでに貴族たちの重厚な談笑が聞こえてきた。その中にはセドリックの姿もあったが、彼は私に気づくと、まるで私を無視するかのように顔を背けた。だが、私の心は冷静だ。セドリックの態度がどうであれ、今の私は復讐を果たすことに全てを賭けている。


「リリアナ、お前も来たのか。」


 セドリックが私に声をかけてきた。声には嫌悪感がにじんでいたが、私はその言葉を無視して、冷静に彼を見つめ返した。


「今日の会議には、重要な話があると聞いて来たまでよ。」


 私はゆっくりと席に着きながら言った。私の心の中では、エレナが何かを仕組んでいることは明白だった。彼女がどれほど巧妙に王宮を操作しているか、その全貌を知るために、この会議は必要不可欠だった。


 会議が始まると、重臣たちの間で様々な議題が取り上げられたが、その中で一番注目すべき話題は、王位継承に関することだった。王位を巡る争いは、エレナの手のひらの上で進行していた。王位継承権を握るために、彼女は周到に王宮内の力をコントロールし、どのようにして王子たちを自分の思い通りに操るかを考えていたのだろう。


「エレナ、あなたが裏で手を引いていることを知っているわ。」


 私は会議が進む中で、静かにその言葉を口にした。エレナは私の言葉を聞くと、驚きの表情を浮かべたが、すぐにその顔を引き締めた。


「何を言っているの、リリアナ?」


 エレナの声は冷ややかで、挑発的だった。しかし、その表情には動揺の色が濃く滲んでいることを私は見逃さなかった。


「あなたが関わっているのは、王位継承に関する陰謀よ。」


 私は一歩踏み込んで、彼女をじっと見つめた。


「セドリックの後ろに潜んで、彼を操ろうとしているんでしょう?」


 その言葉に、会議室の空気が一瞬で凍りついた。貴族たちは私の言葉に驚き、エレナとセドリックに視線を向けた。セドリックは一瞬、顔を歪めたが、すぐに自分を取り繕った。


「そんなことはない。」


 セドリックは淡々と答え、エレナの方をちらりと見る。だが、私にはその視線の裏に何かが隠れているのが分かる。彼もまた、この事実に気づいているのだろう。


 エレナは唇をかみしめながら、冷徹な目で私を見返してきた。「あなた、何を考えているの? こんな場で私を脅そうとしても、無駄よ。」


「そう思うかもしれないわね。」


 私は静かに笑った。


「でも、あなたが抱えている秘密を暴けば、この会議も王宮の未来も、全てがひっくり返ることになる。」


 その瞬間、会議室の扉が急に開き、数人の衛兵が入ってきた。彼らは私を見つめ、すぐに一人が声をかけた。


「リリアナ様、王太子セドリックの命令で、お前をすぐに王太子の元へ連れて行けとのことです。」


 その言葉に、私は一瞬驚きの表情を浮かべた。セドリックの命令…? 一体、何のために私を呼び出したのか。私の胸に不安が広がる。


「どうやら、私の出番のようね。」


 私は微笑みながら言った。


「リリアナ、何か不安なことがあれば、私がついて行く。」


 マーカスが私に近づいてきたが、私はゆっくりと首を横に振った。


「大丈夫よ、マーカス。私が何をしようとしているのか、セドリックにきちんと伝えるわ。」


 私は静かに言って、衛兵たちに従った。


 王太子のもとへ向かう途中、私の中には怒りと冷徹な決意が渦巻いていた。王宮の中で繰り広げられる陰謀が、すべて私に味方するように思える瞬間が訪れる。セドリックが私に与えたチャンスを無駄にしないよう、私は今、一歩ずつ進んでいるのだ。


 王太子の元へと足を進めるその時、私の心に新たな力が宿ったように感じた。復讐の炎はますます強く、そして確実に燃え続けている。

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― 新着の感想 ―
文字の奥行きと描写の巧みさが本当に素晴らしく、毎回とても勉強になります。 特にさりげない仕草や心情の流れに、深く引き込まれました。 今後も参考にさせていただきます!
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