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第8章:王宮の闇

 廃屋を後にした後、私たちは急いで王宮へ向かうことにした。夜の王都はどこか静まり返り、私たちの足音だけがひときわ大きく響く。手にした古書は、今後の復讐のための最も重要な証拠となるだろう。しかし、その一冊の本がもたらすことになる混乱は、想像以上のものかもしれない。王宮の中で、エレナがどれほど深く根を張っているのかを考えると、恐怖すら感じた。


「リリアナ、この情報を王宮に持ち帰って、どうするつもりだ?」


 マーカスが歩きながら尋ねてきた。


「エレナを追い詰める。」


 私は冷たく答える。


「これを使えば、彼女が抱えている秘密を暴くことができる。そして、王太子セドリックに真実を突きつければ、彼女の立場は揺らぐ。」


 マーカスは私の言葉に少し躊躇いを見せながらも、静かに頷いた。「でも、王宮の中には敵が多すぎる。セドリックだけでなく、エレナを擁する勢力も力を持っている。」


「だからこそ、慎重に動く必要がある。」


 私は冷静に言った。


「だが、私の目的は復讐だ。王太子も、エレナも、全ての裏切り者に報いを与える。」


 王宮に到着する頃、すでに夜は深まっていた。王宮の大門前で、私たちは一度足を止めた。門の守衛たちは警戒を強めているが、私の魔力を駆使すれば、誰にも気づかれずに中に入ることができる。しかし、今回は違った。今回は、慎重に、そして確実に目的を達成するために、王宮内で自分の立場を固めなければならない。


「今夜、何をするつもりだ?」


 マーカスが囁いた。


「まずはセドリックに会う。」


 私は静かに答えた。


「彼に、この証拠を突きつける。そして、エレナの正体を暴く。」


 王宮の中に足を踏み入れ、私たちは密かに通路を進んだ。廊下は広く、煌びやかな装飾が施されているが、その美しさとは裏腹に、王宮には無数の陰謀が渦巻いていることを私は知っていた。エレナとセドリックの間に横たわる暗闇が、私をここに導いている。


 私たちが王太子の寝室に到着すると、静かな足音が響いた。部屋の扉を開けると、王太子セドリックがベッドに座っていた。彼は私の姿を見ると、驚いた様子を見せたが、すぐにその表情を引き締めた。


「リリアナ…来たか。」


 セドリックは冷徹な声で言った。その声の裏に隠れた不安を、私はすぐに感じ取った。


「セドリック、あなたがどれだけ私を裏切ったか、もう忘れたわけじゃないわよね?」


 私はそのまま進み、彼の前に立った。


「何を言っているんだ?」


 セドリックは不安げに目を細めたが、私の手に持つ古書に気づき、表情が一瞬で変わった。


 「これが何かわかる?」


 私はそのまま古書をテーブルの上に置いた。


 「これがあれば、あなたもエレナももう逃げられない。」


 セドリックは古書を見つめ、言葉を詰まらせた。だが、すぐに彼は冷ややかな笑みを浮かべた。


「それが何だというんだ? そんなもの、俺にとっては何の意味もない。」


「エレナがあなたを裏切っている証拠だ。」


 私は低く、冷徹に言った。


「ラルフ王子と彼女が結託し、あなたの王位の座を狙っていたことを、あなたに証明できる。」


 セドリックは一瞬、固まった。だが、すぐに顔を歪めて笑った。


「それがどうした? ラルフ王子が消えた今、俺にはもう何も問題はない。」


 その言葉に、私は思わず冷笑を浮かべた。


「あなたの中ではそうかもしれない。でも、王宮の中には、あなたの知らない陰謀が今も進行している。エレナがあなたを操り、王位を奪う準備をしていること、気づいていないの?」


 セドリックはしばらく黙っていたが、やがて顔を上げ、私を見つめた。「エレナが…?」


「その通り。」


 私は力強く頷いた。


「あなたが無知でいる限り、エレナはあなたを裏切り続ける。あなたの王位も、彼女に奪われることになる。」


 その言葉に、セドリックの表情に焦りが見えた。彼はしばらく黙って考えていたが、やがてゆっくりと立ち上がり、私の前に進み出た。


「お前が言っていることが本当だとしても、どうすればいい?」


 彼の声には、ほんのわずかだが迷いが混じっていた。


「あなたがエレナを捨てるしかない。」


 私は冷徹に言い放った。


「そして、私の復讐を成し遂げる手助けをするのよ。」


 セドリックは一瞬、私を見つめた後、黙って頷いた。その姿勢に、私はほっと一息ついた。エレナを追い詰めるためには、彼の協力が必要だった。


「さあ、セドリック。あなたの王位を守るために、エレナを打倒する準備をしなさい。」


 私は冷たく言った。


 王宮の中で、私の復讐の炎は確実に燃え上がっている。そして、エレナと王太子セドリックの命運は、私の手の中に握られていた。


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