第5章:復讐の炎
王都の広間から帰ったあの日から、私は毎晩、自室で一人静かに過ごすことが多くなった。外では華やかな舞踏会が開かれ、貴族たちの笑い声が聞こえてくるが、私の耳にはそれがただの無意味な音のように響いていた。王太子セドリックとエレナの姿を見たあの瞬間、私の中で何かが確実に変わった。
「リリアナ。」
部屋の扉が軽くノックされた。私はその声に反応して顔を上げた。部屋に入ってきたのは、マーカスだった。彼は私の親友であり、忠実な仲間でもある。私が復讐のために魔女として目覚めたときから、彼はずっと私を支えてくれていた。
「どうした、マーカス?」
彼は一歩、私の前に進み、静かに言った。「セドリックの動きが、少しずつ分かってきた。どうやら、彼は王位を継ぐための計画を進めている。」
その言葉を聞いて、私は思わず息を呑んだ。セドリックが王位を狙っている? 彼の野望は私が思っていたよりも遥かに大きい。そして、その計画には私がいるべきではない。
「それをどうするつもりだ?」私は冷静に尋ねた。
「まずは、セドリックを王位につけさせることだ。」マーカスは一瞬、私を見つめた。「しかし、その前に、エレナを追い詰める必要がある。あの女が、セドリックの計画に深く関わっている。」
エレナ。あの冷酷で策略家のような女性が、セドリックの側にいる限り、私の復讐は完結しない。彼女が王太子と共に支配する王国など、私には耐えられない。
「エレナをどうやって追い詰める?」
マーカスは一歩踏み出し、低い声で続けた。「まずは、エレナが抱えている秘密を暴く必要がある。彼女が王太子と結婚する理由には、ただの愛情ではない何かがあるはずだ。」
「秘密…?」
「そうだ。」マーカスは頷き、少し沈黙した後、さらに続けた。「エレナには過去に、王家に関わる重大な秘密がある。それを暴けば、セドリックとの関係も壊せる。」
その言葉に、私は再び深く考え込んだ。エレナの秘密。もしそれを掴むことができれば、セドリックとの関係を壊し、復讐を果たすための大きな一歩になる。だが、どこから手をつければいいのか…。
「私は、あの女を追い詰める。」私は決然と言った。「セドリックを手に入れることはできても、エレナがいる限り、私の復讐は完結しない。」
マーカスは私の言葉に無言で頷き、そのまま部屋を出て行った。
一人残された私は、窓の外に目を向けた。月明かりが静かに照らす王都の街並みを見つめながら、私は決意を固めた。エレナを倒さなければ、私の復讐は終わらない。彼女の秘密を暴き、セドリックとエレナの王位の野望を打破しなければならない。
その時、私の中で一つの思いつきが浮かんだ。あの女がどれほど巧妙で計算高いかは知っている。しかし、私もまた、彼女に負けないくらい冷徹であろう。私は復讐を果たすために、あらゆる手段を選ばない覚悟を決めた。
エレナ、セドリック、そして王家の計画。その全てを打ち砕くために。