第4章:新たな未来へ
王都の空が見えてきたとき、私の胸は静かに、けれども確実に高鳴った。数ヶ月間、遠くから王都を眺めることしかできなかったあの街が、今、私を迎え入れる場所となる。かつて、私はこの街で愛と希望に満ちた未来を描いていた。しかし、今は違う。今、この街には復讐の炎を灯すために帰ってきた。
「リリアナ、準備はいいか?」
マーカスの声が、私を現実に引き戻す。彼は馬車の隣で静かに立っていた。いつも冷静で、私を支えてくれる存在だ。
「はい。」私は短く答えると、深呼吸を一つしてから馬車を降りた。
王都の街並みが目の前に広がる。華やかな貴族たちが行き交い、商人たちの声が響く。かつて私もその一員だった。だが、今はただの一観客に過ぎない。
マーカスが私に近づき、小さく言った。「まずは、セドリックとエレナの居場所を突き止めることだ。あの二人の行動を監視し、隙を見て復讐の手を下さなければならない。」
私は頷いた。その通りだ。だが、ただ復讐するだけでは足りない。私は彼らに思い知らせる必要がある。私がどれほど強くなったのか、そして私を侮ったことがどれほど間違いだったのかを。
王都の中心にある大広間で、王太子セドリックが盛大な舞踏会を開くことが決まったというニュースが飛び込んできた。それは、エレナとの結婚を祝うためのものだった。
舞踏会。私が以前、セドリックと共に参加したあの場所。思い出すたびに胸が締め付けられる。しかし、今の私はもう以前の私ではない。この舞踏会こそ、復讐を果たす絶好のチャンスだ。
「マーカス、舞踏会に出席する。」私は決然と言った。
彼は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに納得したように頷いた。「わかった。だが、注意して行動しろ。無駄に目立つな。」
私の心は冷静だった。復讐を果たすためには、まずセドリックとエレナの心を掴まなければならない。私がどれだけ変わったかを知らしめ、彼らを恐れさせることが、今の私にできる最初の一歩だ。
舞踏会の夜。豪華な衣装を身にまとい、私は再び王宮の広間に足を踏み入れた。煌びやかなシャンデリアが天井から垂れ下がり、貴族たちの笑い声が響き渡る。その中で、セドリックはエレナと寄り添い、私を見て微笑んだ。
「リリアナ、久しぶりだな。」セドリックが冷たい声で言った。
「殿下。」私は彼を見据え、冷ややかな声で返す。「あなたが私を婚約破棄した理由、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」
その言葉に、周囲の貴族たちがざわめき始める。セドリックの表情が一瞬だけ曇ったが、すぐにエレナが彼の手を取り、私に向けて冷笑を浮かべた。
「リリアナ、あなたがまだここにいるなんて。さすがにもう少し自分の立場をわきまえたら?」エレナが言った。
その言葉に、私はただ静かに笑った。だがその笑みには、もう彼らを許すつもりなど微塵もなかった。私の中に眠っていた力が、今、静かに、そして確実に目を覚まし始めている。
「わかりました。」私は一歩、前に出ると、セドリックとエレナを見据えた。「でも、覚えておいてください。復讐の魔女は、決して忘れません。」
その言葉が広間に響くと、周囲の空気が一瞬、凍りついた。私はそのまま背を向け、会場を後にした。復讐の手は、もうすぐにでも下されるだろう。
これが、私の新たな未来への第一歩だ。