ゲームスタートとまおーさま
──────目を開けると、そこには現実があった。変な言い方と思うかもしれないが、本当にそうとしか言い様がないのだ。現実と何ら変わらないほどのグラフィック、体に当たる心地いいほどのそよ風、人々の喧騒…全てが違和感なく調和しており、実はここが現実ではないのかと錯覚してしまいそうなほどだ。
ふと思い立って周りを見てみると、皆一様にこのゲーム…いや、異世界とでも言うべきだろうか。この異世界に見惚れ、立ち尽くしていた。
…が、まあ当然時間がたてば動き出す人も出てくる。皆自分が時間を忘れてこの世界に見惚れていたことに気付き、少し恥ずかしげに動き出していた。そんな風に続々と動き出すプレイヤーを見ていると、突然目の前にウィンドウが表示された。そこにはチュートリアルクエスト[冒険者ギルドに行き、冒険者登録をしよう]と書いてあった。
目の前に冒険者ギルドと書いてある大きな看板が掛けてある建物があったので、おそらくこれに入るのだろう。実際ウィンドウに表示された文字を見てプレイヤー達が続々と冒険者ギルドの中に入っていっている。しかし…
「人、多いなぁ」
そう、とても人が多いのである。まあ1億人以上がこのゲームを買っているのだから当然っちゃ当然だが。ちなみに、このゲームにはたくさんのサーバーがあるらしく、ある程度人の流れが安定してきたら統合をするそうだ。たくさんのサーバーがある割には人が多すぎる気もするが。
「うーん、こうなったらチュートリアルは後回しにして狩りに行こうかな」
チュートリアルは人が少なくなったら行くことにしよう、うん。で、東西南北何処へ行くかだが、とりあえず北に行くことにするか。理由は特にない。
ここが北門か。だいぶ時間かかったなぁ。街の広さもリアルってすごいこだわりだな。で、これは見た感じ門番さんに声かければ外に出れるやつかな?
「すみません、モンスターを狩りに外に行きたいのですが…」
「…ん?ああ、いいぞ。あんた渡り人か?なら死ぬことはないだろうが気を付けるんだぞ」
「はい、ありがとうございます。では」
おおー…、ついに外かぁ。周りを見渡してみると草原が広がっており、かなり奥に森が見えた。おそらくこの草原でレベルを上げて森に挑めよ、ということだろう。うん、まあまだチュートリアルもやってないし慎重に行こう。今太陽があるからステータス半減してるしね。
索敵を発動し草原を歩いていると、索敵に何かが引っかかった。おそらく魔物だろう。初戦闘の相手は誰だろな。隠密発動してこっそり見てみるか…。
ということで隠密を発動して魔物がいる場所に行ってみた。そこにいたのは、水色の丸い可愛らしい生物だった。そう、最弱モンスターとして名高いスライムである。とりあえずこちらには気づいてないみたいだ。隠密すごい。
せっかく気付かれてないんだし、奇襲でもしようかな?できれば1撃で倒したいし。てなるとクリティカルを出したいんだけど…スライムの弱点ってどこだろ。体の真ん中になんかあるしこれかな?…よし、そこ刺してみるか。
気付かれずに背後に回っている間にクリティカルについて解説をしておこう。まずクリティカルを出すのにはDEXが大いに関係している。具体的にDEXをいくつ伸ばせば何%というのはわからないが、DEXが高ければ頭に攻撃しようが胴体に攻撃しようが足に攻撃しようがクリティカルが確率で出るようになる。じゃあDEXにある程度降らなければいけないのでは?と思うかもだが、かなりDEXを振らないと出るようにすらならないのでSTRやINTに振れなくなり、クリティカルを出しても全くダメージが出ないという本末転倒な状態になってしまう。なので私が基本的にクリティカルを出すために使うのはもう1つの方法である敵の弱点に攻撃をするというものだ。敵によって弱点は異なるが、人型ならば脳がある部分、心臓などだ。魔物は種類によって異なる。ちなみにクリティカルのダメージ倍率は1,5倍だ。
ということで、スライムの背後に来た。では…3…2…1…今!
私はカウントが終わると同時にスライムの核らしきものに勢い良く短剣を突き刺した。倒せていない可能性もあるので短剣を引き抜きバックステップで距離をとったが、どうやらクリティカルを出したおかげで1撃で倒せていたようで、スライム君はポリゴンとなって消えていった。さらば。さてさてドロップ品は…スライムゼリーか。通常ドロップだね。
よし、とりあえずクリティカルなら1撃でスライムを倒せるみたいだし、スライムを倒しつつ森へ進むか。索敵と隠密発動っと…
あれから少したち、森の目の前で種族レベルは変わらず職業レベルが3に上がった。ドロップはスライムゼリー20個とスライムの核が3個。BPが20、SPが2もらえたので森に入る前に振りわけよう。
名前:マオ
種族:吸血鬼
職業:大罪の魔王
種族レベル:1
職業レベル:3
HP:450/600
MP:600/600
STR:95(190)
VIT:75(150)
INT:85(170)
MND:75(150)
AGI:105(210)
DEX:75(150)
ユニークスキル
「嫉妬」「強欲」「暴食」「色欲」「怠惰」「憤怒」「傲慢」
スキル
「短剣術Lv,2」「隠密Lv,2」「索敵Lv,2」「血魔術Lv,1」「闇魔術Lv,1」「バックスタブLv,3」
称号
「邪神の加護」「大罪」「ユニークな生き様」「モンスターの友」
BP:0→20→0
SP:2
装備
初心者の短剣
初心者の上着
初心者のスカート
初心者の靴
テイムモンスター収納指輪
テイムモンスター
ケルちゃん(ケルベロス)
※ステータスの()は本来のステータス
…なんか色々と忘れてたね。とりあえずHPが減ってるのは吸血鬼の種族特性の影響かな。まあこれはしょうがないか。ちなみに魔術と大罪系スキルに関しては森の戦闘で使ってみるとして、ケルちゃんは今召喚するか。テイムモンスター収納指輪から出すには…解放って言えばいいのか。
「よし、解放!」
叫ぶと同時にケルちゃんが私の前に出てきた。とりあえず頭を撫でておく。
「よし、準備も終わったし森に挑むよ!ケルちゃん!」
ケルちゃんも3つの首全部を使って頷いたので、早速索敵を発動させて森の中へ入る。すると、すぐに反応があった。今回はケルちゃんと共闘するつもりなので、隠密は使わないでおく。このまま暗殺者スタイルで行ってもいいけど、やっぱり本職には劣っちゃうし汎用性がないからね。直接戦闘もできるようにしないと。
ということで魔物がいる場所に行くと、そこには熊がいた。表示された名前はフォレストベアーLv,7。格上だがこっちにはケルちゃんもいるし、大罪系スキルもある。ちゃんと戦えば勝てるだろう。
「グォォォ!」
…と、どうやら熊がこちらの存在に気付いたらしい。まあ隠密発動してなかったらそりゃ見つかるか。
熊は真っ直ぐこちらに向かってくる。避けるのは容易いだろう。なら…
「怠惰、強欲発動。指定ステータス、STR」
[[強欲]によりフォレストベアーからSTRを20奪いました。]
とりあえず怠惰と強欲を発動し、強欲でSTRを20奪った。そのタイミングで熊が突っ込んで爪を大きく上に上げたので、斜め前に回避し短剣で首を切った。が、さすがにレベル差もあり完璧に切ることはできなかった。しかし、ケルちゃんが爪を空振り隙ができた熊に追撃し、熊は首を切られポリゴンとなった。
[種族レベルが上がりました]
[職業レベルが上がりました]
[ケルちゃんのレベルが上がりました]
うん、森の魔物相手でも十分戦えるっぽいね。もうちょっと奥まで行こうかな?まだ夜ご飯まで時間あるし。よし、進むか…
突然ですがここで読者の皆様に問題です。今私はどこにいるでしょーか?10秒以内にお答えください!…はい、時間切れです!では正解を発表しまーす!正解はー?
[ボスエリア:フォレストベアーの巣に入りました。エリアボス:マザーフォレストベアーとの戦闘が開始されます]
[エリアボス:マザーフォレストベアーLv,30]
名前:マオ
種族:吸血鬼
職業:大罪の魔王
種族レベル:3
職業レベル:7
HP:300/1000
MP:1000/1000
STR:100(200)
VIT:75(150)
INT:105(210)
MND:75(150)
AGI:120(240)
DEX:75(150)
ユニークスキル
「嫉妬」「強欲」「暴食」「色欲」「怠惰」「憤怒」「傲慢」
スキル
「短剣術Lv,4」「隠密Lv,2」「索敵Lv,4」「血魔術Lv,1」「闇魔術Lv,1」「バックスタブLv,3」
称号
「邪神の加護」「大罪」「ユニークな生き様」「モンスターの友」
BP:0→80→0
SP:2→6
装備
初心者の短剣
初心者の上着
初心者のスカート
初心者の靴
テイムモンスター収納指輪
テイムモンスター
ケルちゃん(ケルベロス)
※ステータスの()は本来のステータス
名前:ケルちゃん
種族:ケルベロス
レベル:5
HP:1800/1800
MP:300/300
STR:540
VIT:270
INT:75
MND:75
AGI:220
DEX:50
ユニークスキル
「獄狼」
スキル
「爪術Lv,3」「咆哮Lv,1」「闇魔術Lv,1」
称号
「魔王のペット」「邪神の興味」
勝てるか!種族レベル、職業レベル、ケルちゃんのレベル足してもレベル差15あるんだぞ!こんなところにいられるか!私は家に帰らせてもら「ゴンッ!」
[ボスエリアからは出られません]
…しゃーない、やるかぁ。
ゲーム開始2時間もたってない上にチュートリアル受けてない主人公にエリアボス戦させる小説あるってマ?