街の散策とまおーさま
※このゲームはVR《MMO》です
「っと、そういえばギルドの前でログアウトしたんだっけ」
家事を終わらせた私はまたLMOにログインした。ギルドの前にいるのも迷惑だしさっさと移動しないと…いや、ちょっと待った。私これからどうしよう…。リンは…確かさっき電話でβの時に仲良くなった人とパーティー組んで狩りに行くから一緒にできないって言ってたし…あ、そうだ。武器の新調もしたかったし、街の探索でもしようかな?よし、そうと決まれば適当に見て回ろう。あ、先に串焼き買っとこ。
・・・・・・
街を歩いていて思うが、本当にこのゲームはリアリティがすごい。プレイヤーとNPC…もとい、住民の区別なんてプレイヤーの頭の上に表示されているネームプレートがなければ絶対つかないと思う。少なくとも私では無理だ。
物理演算も完璧に近いし、ここの運営はスーパーコンピュータでも使っているのだろうか。…ありえそうで怖いし話を戻そう。ええと、街を歩いて思ったのが──────
──────そこまで考えて、ようやく私は気付いた。いや、気付いてしまった。
「もしかしなくても私、迷子…?」
…ここ、どこだ。私は大通りを歩いてたはずだけど…。魔法、というより幻術でも使われたような気分である。だが術者らしき影は近くにはない。うーむ、戻るか…?…いや、なんかのイベントの可能性もあるし進もうかな。何より面白そうだし。というか迷っただけかもだし。
ということで路地裏(仮称)を進んだが、この路地裏、分岐がとんでもなく多い。10秒に一回は分岐が来てるレベルだ。今のところ全部右を選択してるけど、これ大丈夫かなぁ。
「っと、なんかある!」
ついにお店っぽい物を見つけた。ええっと、お店の名前は…鍛冶屋?…え?それだけ?なんか名前とかないの…?
うーむ、果たしてここに入ってもいいものか。んー…まあとりあえず鍛冶屋ではあるっぽいし短剣もあるでしょ。よし、入ろーっと。
「おじゃましまーす…って、え?」
扉を開け入ってみると、そこには死んだように横たわってる小さい人間っぽいものがいた。え、これ死んでないよね…?
「あ、あのー…大丈夫でしょうか?というか生きてます?」
「………ぁ」
「ん?なんて?」
「お……なか……すい……た……がくっ」
「ちょちょちょ!ええと、なんか食べ物あったっけ…ええと…あ、さっき買った串焼き!はいこれどうz」
「食べ物ぉぉぉぉ!」
「ってうわぁ!」
なんか押し倒された!…あ、めっちゃがつがつ串焼き食ってる。そんなお腹すいてたのね…。とりあえず食べ終わるまで待とうかな。
・・・・・・
「…失礼した」
「あ、はい…えと、大丈夫ですか?」
「…ん、もう大丈夫。食べ物ありがとう」
「あ、はい…」
「…お礼に無料で何か打つ」
「あ、そういえばここ鍛冶屋でしたね…」
「…」
「え、ええと…あ、その、失礼ですがそんなお若いのに鍛冶なんてできるんですか?」
「…私、ドワーフ。小さいのは当たり前。これでも成人してる」
「マジですか!?」
速報、この子成人してるし人間じゃなくてドワーフだった。というかなんでお腹すいてたんだ…?
「そういえばなんであんなにお腹すいてたんですか?」
「…渾身の一振りを5日かけて夜通し打ってたらこうなった」
「ええ…眠くないんですか?」
「…ん、眠い」
「ええ、じゃあ後で来ますから寝ててくださいよ、5日なんて体に悪いですし」
「…あなた、多分ここに来る道知らない。迷子ってとこ」
「うっ…そうですけど…」
「…これ、地図。ここに来る道書いてある。絶対誰にも渡さないで。後、次来るときできればこのお金で串焼きいっぱい買ってきて。おつりはいらない」
「ええ!?多すぎますよお金!どんだけ買ってくればいいんですか!?」
「…いいから。私はもう寝る。……すぴー…」
「ええ、寝ちゃったし…う、うーん、とりあえず椅子に座らせといて…なんかお礼するって言ってたし、串焼きいっぱい買ってまた来ようかな、うん。じゃ、私も戻るか…」
ということで戻ることにした。何だったんだろう、あの人…もといあのドワーフ。
・・・・・・
というわけで次の日の昼。流石にもう起きてるだろうしあのドワーフさんのとこに行くことにした。串焼きも50本近く買ったし大丈夫だろう。よし、地図を見ながら行くぞー。
・・・・・・
「おじゃましまーす」
「…ん、いらっしゃい」
「あ、どうも。体調は大丈夫ですか?」
「…ん、すっかり元気になった。あなたが串焼きもって来てくれたお陰」
「あはは、どういたしまして。あ、後私の名前はマオです。あなたのお名前は?」
「…私の名前はラスティ。よろしく」
「よろしくお願いします。あ、これ串焼きとおつりです」
「…おつりは報酬。いらない」
「でも流石に…」
「…いらない」
「そこまで言うならありがたく…で、一回無料で何か打ってくれるって話でしたけど、いいんですか?」
「ん。これでも腕には自信がある。並べてるやつの性能見てみて」
「んじゃ遠慮なく…」
[武器種・短剣]鉄の短剣 品質A+
鉄でできた短剣。それ以上でもそれ以下でもないが作成者の腕がとても良いため性能が高くなっている。STRとAGIが伸びる。
「ファッ!?」
思わず変な声が出てしまったがしょうがないと思う。だって品質A+だよ?こんなの初めて見たよ。確かプレイヤーメイドの最高品質がC-、この街の世界有数の達人NPCでAだったはず。それもどちらも第1の街でとれる最高の素材で。ラスティさん何者なの…?
「あ、あのー…ほんとに無料で作ってもらっていいんでしょうか」
「…ん、いい。次回からはお金もらうけど」
「あー…まあ、ありがとうございます。作ってもらうとして、素材は持ち込みですか?」
「…ん、私で用意した方が良いのは作れる。でも、それだとあなたに使いこなせなくなる。だから、できればアイアンゴーレムの素材一体分持って来て」
「あ、アイアンゴーレムですか…タイタンゴーレムに一切攻撃が効かずに倒されちゃったんですけど、倒せますかね」
「…ん、初心者の短剣で普通のゴーレム余裕で倒せるなら私が作った鉄の短剣持っていけばアイアンゴーレムでも余裕で倒せる。タイタンゴーレムは格が違うから無理」
「な、なるほど…でも鉄の短剣もらっちゃっていいんですか?」
「…ん、その程度いくらでも作れる」
「じゃあ遠慮なく、では取ってきますねー」
「…ん、気を付けて」
・・・・・・
「わお、ゴーレムがサクサク倒せる」
今は月が出ている。そのおかげでSTRも物凄く上がっており、短剣のこともありゴーレムもバックスタブ1発とちょっとで倒せる。こりゃすごいわ…。ちなみに今の私のステータスがこちら。
名前:マオ
種族:吸血鬼
職業:大罪の魔王
種族レベル:11
職業レベル:21
HP:4500/4500
MP:3100/3100
STR:260(520)
VIT:150(300)
INT:300(600)
MND:150(300)
AGI:390(780)
DEX:150(300)
ボーナスポイント:3000→0
※ボーナスポイントはHPかMPにしか割り振れません
ユニークスキル
「嫉妬」「強欲」「暴食」「色欲」「怠惰」「憤怒」「傲慢」
スキル
「短剣術Lv,12」「隠密Lv,10」「索敵Lv,9」「血魔術Lv,1」「闇魔術Lv,2」「バックスタブLv,15」「鑑定Lv,5」
称号
「邪神の加護」「大罪」「ユニークな生き様」「モンスターの友」「孤高の吸血鬼」「北の森の初攻略者」
BP:0→140→0
SP:12→20
装備
鉄の短剣
初心者の上着
初心者のスカート
初心者の靴
テイムモンスター収納指輪
テイムモンスター
ケルちゃん(ケルベロス)
※ステータスの()は本来のステータス
うむ、バケモンかな?どう考えても最序盤になるステータスじゃないよね、これ。というかSPがめっちゃ余ってるなぁ、後でなんか取ろうかな。っと、アイアンゴーレムだ!倒せるかなー?
「怠惰、強欲発動。ステータス指定、VIT。隠密発動…バックスタブ!」
[[強欲]によりアイアンゴーレムからVITを60奪いました]
普通のゴーレムにやっているように奇襲を仕掛けると、アイアンゴーレムの背中がちょっと削れた。さすがにワンパンとはいかないか。まあ、AGIも普通のゴーレムよりかは高そうだけど夜状態の私の敵じゃないね。
ということで危なげなく普通に撃破。素材確保できたし納品してさっさとログアウトしようかな。
・・・・・・
「…ん、ちゃんと一体分ある。3日後には作れてると思うから3日後に来て」
「あ、ありがとうございます。あと、ちょっと要望と質問があるんですけど…」
「…ん、なに?」
「まず作るのを短剣じゃなくて小太刀にして欲しいんですよね。そっちの方が使い慣れてるので」
「…ん、わかった。質問は?」
「武器に魔法の効果を付与する方法ってありませんかね?」
「…ん、ある。でも私には理論がよくわからない」
「そうですか…いえ、あると分かっただけありがたいですね。ありがとうございました」
「…ん、でもそれを知ってるであろう友達には心当たりがある。第2の街にいる。紹介状書くから第2の街の冒険者ギルドの受付の人にそれを渡して。そしたらその友達に会える」
「何から何までありがとうございます。また串焼き買ってきますねー」
「…ん、また」
さて、用事も終わったことだしさっさとログアウトするかなぁ。
「ログアウトっと」
なんか急にFPSがめっちゃうまい無口Vの話書きたくなった。これが天啓…?(違う)
ちょっと今やらかしたんで聞きたいんですけど、誤字報告のタブ開いてすぐ消しちゃったんですよね。タブを。タブもっかい開く方法ってあるんですかね?できれば教えてほしいです。ちなみに私はタブレットでやってます。