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33. 姫たちの奪還へ





 ルクランブルク王国には昔から二つの派閥が存在していた。



 親王国派と親帝国派である。




 親王国派の派閥には、王国の建国当初から国に仕える歴史ある三大公爵家や、国の政治の中枢を担う貴族や役人たちが属していた。


 そして親帝国派は、新興貴族や犯罪を犯し刑期を終えた傭兵などで構成されていた。


 帝国との貿易や外交は慎重を期すべきという親王国派に対して、帝国と王国間の貿易や出稼ぎなど人の移動を自由に行えるようにすべきという親帝国派の意見は、長い間平行線を辿っていた。



 しかし、二十年前に起こった帝国の侵略行為により、親帝国派の勢力はかなり弱まっていた。

 帝国との国交は存続されたが、帝国との貿易などは厳しく規制され、それにより富を得ていた新興貴族達は大打撃を受けた。



 その中で唯一生き残ったのが、グロスマン伯爵だった。




 シュネーハルト公爵領とヴァルナー公爵領との間にあった、貧しくも王家に忠誠を誓っていた子爵領。


 当時、準男爵であったグロスマン伯爵は、そこが帝国との国境であることに目をつけていた。帝国との貿易で儲けた金で伯爵位を手に入れたグロスマン伯爵は、その金で破産寸前だった子爵領を買い取ったのである。


 ところが王国諜報部は、子爵家を破産に追い込んだ黒幕はグロスマン伯爵だという証拠を握っていた。

 それにも関わらずグロスマン伯爵に手出しができなかったのは、親帝国派の筆頭として力をつけていたからである。



 帝国との貿易をほぼ独占し、巨万の富を得たグロスマン伯爵。

 表向きの姿に憧れた商人や準貴族、傭兵などは帝国との国交が盛んになれば、自分も伯爵のように富を得られると信じ、違法な手段での帝国への出稼ぎや輸出入などを行うようになった。


 そうして再び親帝国派の力が強まってきていたのだ。

 礼儀作法の全くなっていないグロスマン伯爵令嬢が、王妃候補として名を連ねるほどに。





 クリスティーナとエカテリーナ王女を乗せているであろう馬車が、グロスマン伯爵領への道を走っているとベアトリーチェが言った時、その場にいた全員に緊張が走った。



 親帝国派は大勢の傭兵が支持しており、グロスマン伯爵と対立するということは国内紛争につながる危険性をはらんでいた。


 紛争で国が荒れれば、ここぞとばかりに帝国が王国を侵略しにくるだろう。

 もしくは親帝国派が帝国と手を組んでクーデターを起こすかもしれない。


 一刻も早く事態を収拾せねば、王国の未来はない。




 そう誰もが顔を青ざめさせていた時、ザルヴァトル公爵が口を開いた。



「陛下、これは親帝国派を一気に叩く……好機かもしれませんぞ」



 国王がザルヴァトル公爵の顔を見ると、エアトリーチェと同じ海のような深い青の瞳を細めて口角を上げていた。




「あの小賢しいグロスマン伯爵にしては、実に粗末な計画に犯行。これはグロスマン伯爵令嬢が私怨で起こした行動と思われますぞ」



「確かに。伯爵令嬢は自分の立場も弁えず、自分が王妃になれば取り立ててやると、王宮内の侍女や令嬢たちに繰り返し発言していたという情報もあります」


 ザルヴァトル公爵の言葉にローテントゥルム侯爵も同意する。



 さらにはヴァルナー公爵も頷いて言った。


「前回の晩餐会でエカテリーナ王女殿下にワインをかけようとしていたことも、周囲にいた令嬢たちからの聞き取りで判明しています。私怨の可能性は高いかと。何せ少し……いや、かなり頭の弱い令嬢のようですので」



「ええ、その通りですわ。エカテリーナ王女殿下の私物が度々壊されたり盗まれたりしておりましたが、それらは全てグロスマン伯爵令嬢が、使用人に金銭を握らせて行わせていたようですから」



 ベアトリーチェの話を聞いた国王は、身を震わせて瞳を大きく見開いた。



「エカテリーナの私物が……? なぜそれを誰も報告しなかった!?」


 国王が机を叩く音が部屋中に響いたが、ベアトリーチェは目を逸らすことなく続けて言った。




「エカテリーナ王女殿下が、陛下には黙っておられるようにと申されたからです」


「何だと?」


「陛下にはご心配をかけたくないからと、自分は大丈夫だからとそう仰っておりましたわ」



 ベアトリーチェの言葉を聞いて、怒りを滲ませていた空色の瞳が揺れ動く。




 二、三秒の沈黙の後、国王は部屋にいる全員を見渡した。




「シュネーハルト公爵、今すぐ騎士団を率いてグロスマン伯爵領へ向かえ。ポータルの使用を許可する」


「御意」




「ヴァルナー公爵、公爵領の兵を伯爵領と帝国の国境に向かわせろ。ネズミ一匹たりとも通すな」


「仰せの通りに」




「ザルヴァトル公爵、逮捕状を作成し、王都のグロスマン伯爵邸を押さえろ」


「直ちに」




「ローテントゥルム侯爵、グロスマン伯爵の身柄を拘束するよう諜報部隊に伝えろ」


「承知いたしました」




「ザルヴァトル公爵令嬢、ローテントゥルム侯爵と共に諜報部の司令室へ向かい、ヴォルグガングと連携をとれ。魔導具の使用を許可する」


「かしこまりました」





「ヴォルフガング、第一騎士団から数人を連れて、エカテリーナとローテントゥルム侯爵令嬢の救出に向かえ」


「了解いたしました」




 国王の命を受け、それぞれが急ぎ足で執務室から退室していく。




「ヴォルフ」



 最後に部屋を出ようとしていたヴォルフガングの背後から国王が名前を呼ぶ。



 ヴォルフガングが振り返ると、真っ直ぐな視線を向ける国王が立っていた。



「俺はここを動けない」


 そして赤くなった拳をぎゅっと握り込んで言った。




「……エカテリーナを頼む」



 国王の怒りや悔しさの入り混じった瞳としかっりと視線を合わせたヴォルフガング。




「必ず連れ戻します」




 そう言葉を残して、クリスティーナとエカテリーナ王女がいるであろう光の先を追いかけるために、ヴォルフガングは執務室から飛び出して行った。





ヴォルフがティーナの救出へ!! ふたりとも無事に助かるようにみなさまどうか応援ください٩( 'ω' )و 今日も読んでくださりありがとうございました♩ ブックマーク☆評価ボタンをポチッとしていただけると励みになります(๑>◡<๑) 明日はクリスティーナにお会いしましょう!

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