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22. 王妃になるのは






 新年を祝う王宮晩餐会。


 王国中の貴族はもちろん、上級職の役人たちも招かれる一大イベントである。



 ルイス国王、ローズマリー王太后、マリーテレーズ王女が待つ金の星の間に身分の低い者から入場していく。





「ローテントゥルム侯爵家、御入場!」




 父であるローテントゥルム侯爵をクリスティーナと母で挟むようにして、三人で赤いカーペットの上を歩く。指定の位置まで来ると、三人は膝を折り王族へ最敬礼の姿勢をとる。

 その後は入場順で会場に並び、全員の到着を待つという流れだ。



 王族への敬礼を終えたクリスティーナが、ちらりと国王が座るバルコニーの方を見ると国王の背後で護衛任務に就いていたヴォルフガングを見つける。


(相変わらずの氷の小公爵様ね)



 最近では表情豊かなヴォルフガングを見ることの方が多かったせいか、クリスティーナがなんとなく違和感を感じていると、ヴォルフガングがクリスティーナと視線を合わせて、少しだけ口角を上げた。


 ドキリ、とクリスティーナの心臓が一瞬大きく鳴ったが、それをなんとか押し留めて平静を装いながら、クリスティーナは微笑み返した。




 ローテントゥルム侯爵家の後には、ヴァルナー公爵家、ザルヴァトル公爵家、シュネーハルト公爵家と三大公爵家が続いて入場した。


 そして最後に、パトリーチェ王国のエカテリーナ王女が入場する番になった。




「パトリーチェ王国第八王女、エカテリーナ・パトリーチェ王女殿下、御入場!」



 その声が金の星の間に響いたのち、淡い水色のドレスに施された金色の刺繍を輝かせながらゆっくりとした歩みでエカテリーナ王女が入場してきた。


 パトリーチェ王家のティアラを身につけたエカテリーナ王女は、まるで光り輝く女神のように美しくその場にいた全員が目を奪われていた。



「王女様はあんなに美しい方だったかしら?」

「まだ可愛らしい姫様だとばかり思っておりましたが……」などと後方に並ぶ貴族たちの口から声が漏れる。




 クリスティーナに教わった優雅な歩みでエカテリーナ王女は一歩ずつ前へと進む。

 やがて立ち止まると、何度も練習したルクランブルク王国における最敬礼のカーテシーを披露した。


 クリスティーナやベアトリーチェにも匹敵するほどの美しいカーテシー。その光景に会場の空気が変わったのをクリスティーナは感じていた。

 それはルイス国王も例外ではなく、蒼い瞳を見開いて少しもその驚きを隠そうとはしていなかった。





 招待客の入場が全て終わり、シャンパンやりんごジュースが給仕たちによって配られる。



 全員の手にグラスが行き渡り、給仕たちが元の位置に戻ったのを確認すると、同じようにグラスを手に持った国王と王太后、マリーテレーズ王女が席から立ち上がった。

 

 静まり返った広間に国王が一歩前に出る音だけが響く。





「新年を祝うこの良き日に、こうして皆の顔が見られて嬉しく思う! 今宵は料理やダンスを楽しんで、また明日から王国の平和と民の安寧の為、一丸となって働いてほしい!」




「「ルクランブルク王国に星の女神様のご加護を」」




 それぞれが手に持ったグラスを掲げて、晩餐会は始まった。




 晩餐会の最初は、他の貴族との挨拶周りや親睦を深めることから始まる。それがひと通り終わると、立食形式の食事に手をつけることができる。

 しかし晩餐会の後半には、王宮楽団の演奏でダンスの時間となる。ダンスを踊りたいものは食事にはほとんど手をつけないのだ。



(お腹すいたわ……)



 両親と別れて、他の令嬢たちに囲まれたクリスティーナは空腹を感じていた。パーティーでは踊ったり、話をするよりも食べることの方が好きなクリスティーナは、早く話を切り上げてこの場を離れたかったのだ。


 ちらりと王宮料理人達が腕によりをかけた料理に目をやると、ちょうどローストビーフが運ばれてきている所だった。



(あら?)



 そのテーブルの横でたくさんの令嬢に囲まれたエカテリーナ王女を見つける。

 笑顔のまま令嬢たちの挨拶を受け取っているが、身動きが取れなくなっているようだった。



(エカテリーナ様を少しだけお助けして、そのままローストビーフまで食べられたら完璧よね!)



 自身の食事の算段まで考えている所は、さすがクリスティーナである。

 クリスティーナは、自分の周りに集まる令嬢達に声をかける。



「皆さま、少し失礼いたします。引き続きパーティーをお楽しみくださいませ」




 微笑み、軽く会釈をしてクリスティーナはエカテリーナ王女のいる場所へ向かう。




「クリスティーナ様……!」




 その姿に気がついたエカテリーナ王女は、ほっとした表情でクリスティーナの名前を呼んだ。



「エカテリーナ王女殿下にご挨拶いたします」


 晩餐会は公の場のため、クリスティーナはエカテリーナ王女に公式な挨拶をした。エカテリーナ王女もそれを分かっていた。



「クリスティーナ様、晩餐会は楽しんでおられますか?」


「はい、ありがとうございます。エカテリーナ王女殿下はいかがですか?」




 叩き込んだ貴族の情報を元に頭をフル回転させて令嬢たちと話をしていたエカテリーナ王女、そしてお腹が空いたので少し休みたいクリスティーナは、 典型的なやりとりをしながら互いに休息を取っていた。


 ロゼの称号を持つルクランブルクの薔薇姫と、隣国の美しい王女が並んで話す姿を他の貴族たちは注意深く観察していた。




「次期王妃はローテントゥルム侯爵令嬢か、パトリーチェ王家の王女殿下でしょうな……」


「三大公爵家の中から選ばれるかもしれませんよ」


「ザルヴァトル公爵令嬢も非常に美しく聡明な方だ」


 クリスティーナたちとは遠い場所で、密かにそんな声が囁かれ始めていた。




 一方で、それらを気に入らないような表情で耳にしていたのは、グロスマン伯爵令嬢だった。


 グロスマン伯爵令嬢は、子爵家や男爵家の令嬢の集まる輪の中で自分がデザインしたドレスを披露しているところだった。ところが、奇抜なデザインのドレスは令嬢たちの目には下品に映ったようで、苦笑いを浮かべながら受け流される始末だ。


 そんな中、ひとりの男爵令嬢がぽつりと呟いた。



「……エカテリーナ王女殿下のドレス、とても素敵ですわね」



 その一言で令嬢たちの話題はエカテリーナ王女へ向けられる。グロスマン伯爵令嬢の話を聞いているのが苦痛だった令嬢たちは、話の流れを変えようと一気に喋り出す。



「ご入場の際のお姿は、まるで女神様のようでしたわ」


「小柄ですのに、大人っぽくて素敵ですね」


「あのドレスとアクセサリーは陛下のお色ではなくて?」


「まあ! それではやはりエカテリーナ様が王妃様に?」


「パトリーチェ王国から、わざわざこちらにいらしているのだから、そうかもしれませんわ」




 令嬢たちの会話から弾き出されたグロスマン伯爵令嬢は、薄いドレスの生地をシワが出来るほど握りしめて「失礼します!」とその場を後にした。


 それから早足で向かった先は、ワインの並ぶテーブルだった。



 赤ワインの入ったグラスを一つを手に取ると、そのままエカテリーナ王女とクリスティーナが話す方へ歩く。その行動をクリスティーナは、エカテリーナ王女と話をしながらもしっかりと把握していた。





「エカテリーナ王女殿下」



 背後からそう声をかけられたエカテリーナ王女が振り返ると、赤ワインを手に持ち、笑顔のグロスマン伯爵令嬢が立っていた。



「グロスマン伯爵令嬢、いかがなさいましたか?」



 エカテリーナ王女もグロスマン伯爵令嬢の異様な雰囲気を感じ取ったのか、警戒し近づかないようにその場から動こうとはしない。



「こちらのワインがとても美味しかったので、王女殿下にもおひとつと思い……」


 そう言いながら、グロスマン伯爵令嬢はエカテリーナ王女との距離を詰める。





「きゃっ……!!」



 グロスマン伯爵令嬢の声と同時に、その手からワイングラスが滑り落ちた。



 パリンと音を立ててワイングラスが割れ、大きな赤いシミがドレスに広がっていくのを見て、グロスマン伯爵令嬢は俯いたままほくそ笑んでいた。





ついに来ました! 悪役令嬢! 思いのほかこのシーンが長くなってしまったので、とりあえずここまでを1話にさせていただきましたm(_ _)m いつも読んでくださりありがとうございます(*´꒳`*) ブックマーク☆評価の方もまだの方は、ポチッとしていただけると嬉しいです! エカテリーナのドレスの行方はいかに……!! 明日もお楽しみに(*⁰▿⁰*)♫

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