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「護衛はいいのか」

「結界と防御魔術かけて走って行くので大丈夫です」


 そうこうしているうちに、他の集落から、霧が晴れた場所へ入り込んでくる亜人さんたちが見えてきた。霧が晴れた場所が出来たんだから当たり前だろう。


「じゃあ、お世話になりました!」

「………ああ」


 最後までちゃんと襲わずにいてくれてよかった。私は結界と防御魔術をかけて、集落の皆さんに頭を下げて走る。忘れがちだが5日の断食後である。もういいかげん人間の限界を越えているんだけど、そこは自分に活力魔術を掛けてなんとかした。餓死しないように気をつけていこう。走りながら、襲ってくる種族を観察する。ゴブリン、トロール、エルフ、ヴァンパイア、ケルベロスなど大小様々だ。

 これら種族をまとめている魔王様ってきっと偉大で尊敬できる人なんだろうな。じゃないと辺境の集落までその名をとどろかすことはない。

 私は走った。体中が悲鳴を上げたけど走った。この苦痛の、何百倍をここにいるひとたちは味わってきたんだ。そして、川を飛び越え、山を登り、崖をロッククライミングして、私はようやく魔王城の前までたどり着いた。


 そこは美しい城だった。


 大変失礼ながら悪の組織の根城みたいなのを想像していたのだが、色は黒系に偏ってはいても全体的に円筒を基にして、細やかな細工と上品な雰囲気が同居している。正直、祖国の城より大きいし綺麗だ。思わずぼけっと眺めてしまいそうだが、私にはそれどころではない使命があったのだった。使命なんて言ったって、自分で決めたことだけどね。

 正門のノッカーをガンガン鳴らす。


「すみませーん!どなたかいらっしゃいませんかー!!」


 すると、城門が開き、いかも執事然とした執事がひとり、ゆっくりと殺気を湛えながら近づいてきた。よし、第一関門クリア。


 すると上空から巨大な稲妻が降ってきた。

 防御魔法でがっちりうけとめ、地面に帰す。

 第二関門クリア。


「辺境の瘴気を払った聖女で死刑囚のロクサンヌと申します!突然の来訪申し訳ありません!そこの長のエヴラールさんから嘆願書を預かってきました!せめてこれに目を通していただけませんでしょうか!」


「…………………受け取りましょう」


 するっと、手紙は魔法で相手の手元へ降り立った。そして、じっくりと検分したあと、


「…そのままそこでお待ち下さい」


 と言われた。よし、第三関門クリア!


 少しずつ体か疲れを訴え始めている。マックスまで活力魔法入れてるのにな。あの執事さんすごいな、一撃で人間の一個中隊と戦える実力があるぞ。


 やがて、長いのか短いのか分からない時間の後、再び正門が開き、眼鏡に緑の髪をした、とても整った顔立ちの魔族が現れた。


「お前が聖女か」

「聖女で死刑囚のロクサンヌと申します」

「辺境の瘴気を払ったとはまことか」

「まことにございます」

「魔王国全域を払うことができると言うのも」

「まことです」

「………………」


 しばし、眼鏡の奥の瞳とにらみ合った。瞳孔が縦に長く、凶悪な猛禽類を思わせる。そして、は、と鼻で笑った。


「嘘はついていないようだが、であれば狂人だ」

「辺境の変化についてはすでにご存じのはず。わたくしはこの国を浄化したいだけでございます」

「なぜ?」

「身勝手で自己中心的な偽善です」


 相手は僅かに瞠目した。そして。


「魔王様に連れてくるよう言われている」


 よし、第四関門クリア!

 あとは死なないだけ!


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