24
聖女は潔かった。ある日気づいてしまえば、もう抑えられなかった。だからまっすぐ、魔王の部屋へ向かい、そして彼が笑顔で迎えてくれたことに胸を一杯にしながら、
「ナタニエル、好きです。私は恋愛的な意味で、あなたを好きになってしまいました」
そう伝えた。
ナタニエルは目を丸くして、数秒固まった。賢明な彼にしてはとても珍しいな、と思ったけれど、
「なってしまった、ということは後悔しているのか?」
「まさか。でも、ナタニエルは私のこと恋愛的に好きではないでしょう?だから…」
「待て待て」
ナタニエルは待ったをかけた。
そして、自分の隣の席を叩く。
ナタニエルの部屋の、もう慣れてしまった、私の定位置。そこにちょこんと座る。
「俺はこれでも自分の感情に正直だ」
「あ、はいそれはなんとなく」
「お前といるとよく笑えるようになった」
「それも少しは…」
「お前が悲しければ俺も悲しい」
「えっ」
ナタニエルが私の両手を自分のそれでそっと包む。
薬指の指輪の感触がする。
「俺は生涯をお前と過ごしたい。お前が愛しくてたまらない」
そんな。そんな言葉、まるで、まるで。
「つまりだ。俺たちは、両思いだ」
なんですって!
振られる前提で告白しに来た正直聖女は、目を丸くして。それから――倒れた。