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 ある日クラリスさんが言いました。


「そろそろロクサンヌさまもいい感じに肥えてきたところですし、ドレスで着飾って踊っているお姿でも見たいですわ~」


 聖女は青い顔をして言いました。


「私ダンスが踊れないんです」


 というかお相手は誰ですか。ナタニエル様ですよね。そんなん、そんなん無理ですって。


「というかロクサンヌさまを着飾りたいんですよ」

「真顔で言い切りましたねクラリスさん」

「こんな素敵な素材が目の前にいるのに!!着飾れないなんて!!ぜひふたりきりの夜のダンスパーティーをプロデュースさせてくださいませ!!」

「なんか企画がはじまっている!!!」


 その時はクラリスさんを何とか言いくるめた私ですが、ふたりきりの夜のダンスパーティー…。正直、正直ですよ!?踊れなくっても、その、少しだけ…。惹かれるものがあります。

 いままで実家は使用人服、聖女は木綿の服でしたから、ここに来てから毎日クラリスさんに可愛らしいワンピースを着せてもらっているせいでしょうが、ほんの少しだけ、ふたりきりなら、ドレスも…着てもいいかなって…。いや気の迷いでしょうけども!?そんなの…。


 そう思いながら魔王様の私室の前をぐつぐつしていたら、緑髪眼鏡ことロドリグさんが魔王様の私室から出てきたので扉に鼻をぶつけた。


「聖女様!?ももも申し訳ありません!!」

「いえ…明らかにここに立っていた私が悪いです…」


 というか徘徊してましたしね…。


「魔王様になにか御用で?」

「え~っと御用というか…」

「ロドリグ、彼女を部屋へ押し込め」

「ひえっ」


 さすがにそこまで手間は掛けられない。私は慌てて、


「失礼します!」


 といってナタニエル様の私室に突撃しました。


「あの、ナタニエル様」

「どうした」


 私室は規制に整理整頓され、大きな事務机の上にも書類一枚ない。

 彼の私を見つめる目は優しくて、暖かくて。目を合わせたら、勇気が湧いてきた。


「あの、ナタニエル様は、ダンスお上手そうですよね…」

「いや全く踊れないが」

「エッ!?そんなにダンスがうまそうな顔をしているのに!?」

「ダンスしようにも近づいただけで相手が倒れる」

「納得!!!」


 威圧感を抑えていらっしゃっても、魔王の圧みたいなの出てるもんな…私は平気だけど…慣れたし…。


「そのですね。クラリスさんが、私にドレスを着せて、ナタニエル様とふたりきりの夜のダンスパーティーをプロデュースしたいって…」

「採用」

「二人ともダンスが踊れないのに!?」

「そう、ふたりともだ。なら、構わないだろう?適当にくるくる回るだけでも、きっと楽しいぞ」


 ナタニエル様は頬杖をついてにこりと笑った。


「それに俺はドレスを着たお前が見たい。見たい。見たい」

「ひええええええ…」


 私も正装したナタニエル様が見たいです…。


「く、クラリスさんに言ってみますね…」


 翌日には全ての準備が整っていたことは言うまでもない。


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