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「改めて、クラリスと申します。どうぞよろしくおねがいします」
「こちらこそよろしくおねがいします…」
結局。ベッドから出ることすらできない貧弱な私では魔王様を追いかけることも出来ず、美女に微笑みかけられているのでした。
「あの、私ここにいていいんでしょうか…」
「なにをいっておられますの。いま、国はお祭り騒ぎですのよ」
「えっ?」
「瘴気が消えて、魔獣も消えて、みんな理性が戻って、おまけに傷も治って!きちんと生活ができる、キチン働ける、きちんと頭を使えるって、とっても喜んでいるんです」
そ、そうだったのか。ここまで大規模の瘴気浄化はやったことなかったから、あんまり想像できていなかった。
「聖女様への感謝の書状やプレゼントもたくさん城に届いております」
「そうなんですか?」
「はい。後でお持ちしましょうね」
「そんな、クラリスさんにご迷惑はかけられません」
「そういうことはお体をしっかり休めてからおっしゃってくださいね~」
うぐぬう。
私は相変わらず素晴らしく豪華で広い部屋で病人食と薬草茶の生活を送っています。もうここの家の子になりた…いやいやいや。
「クラリスさんは私の世話は嫌じゃないんですか?人間のこと嫌いじゃないんですか?」
「人間は嫌いですが聖女様は別でございます。まさにこの国においでなさった奇跡!わたくし感謝の念でいっぱいです」
そういってズズイッと寄ってくるクラリスさんはなんだかとってもいい匂いがした。
「ですから聖女様が悲しい顔をしていらっしゃると、わたくしも悲しいです」
そんな顔をしていただろうか。していたかもしれない。
クラリスさんはにっこりと笑って、
「これからもこのお城にいていただくのですから、なんでも我が儘を言ってくださっていいんですよ。宝石がほしいなら鉱山から持ってきてドワーフに加工させますし、薬草がほしいなら妖精たちの薬草畑には古今東西のあらゆる薬草がありますし、武器…は不要でしょうが魔力補助の杖なども、望めば作らせることができます」
「そんな!貰う訳にはいきません!どうして…」
「それは、魔王様が貰ってほしいと思っていらっしゃるから」
私の頭にははてなが浮いた。どうしてか本気で分からなかったのだ。
クラリスさんはニコニコ笑いながらクローゼットを開いて、若草色のワンピースを取り出すとベッドの私の上にふわりと被せる。実家でも、神殿でも、絶対に着ることのできなかった服だ。
「あの方は公平な方です。そして、国を愛していらっしゃる。それでもどうにもできなかった瘴気を綺麗に払ってくださったあなたは恩人です。それに見合う報酬を、与えたいと思われているのですよ」
わたくしこれでも勤続長いですから、と彼女はからから笑う。
「もういっそお嫁にでもいらしたらどうですか?」
「へぁ!?」
「それくらいのことをなさったのです、貴方様は」
そして窓を開ける。青空が、見える。綺麗な風が、吹いてくる。
「自信を持って下さいませ。貴方様は自由。そして、素晴らしいことをなさったのです」
私は…私はまだそういうふうに自信を持つことができない。自分に出来ることをしただけだから。それだけだから。でも、少しだけくすぐったい気持になって、若草色のワンピースの裾をつまんだ。それはとても可愛いワンピースだった。




